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涙なしには観られない宮崎吾朗監督作品『コクリコ坂から』の魅力と欠点

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【注意】『コクリコ坂から』のネタバレ

宮崎吾朗監督作品『コクリコ坂から』、個人的には地上波で放送される度に全編鑑賞するくらいには好きな作品なのだが、胸を張って他者に薦めることが出来るかと問われれば、少し奥歯に物が挟まった言い方しか出来ないという作品でもある。今回はネタバレ全開で本作の魅力と欠点について書いていこうと思う。

 

  • 青春描写

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まず誰もが認める本作の魅力は東京オリンピック前年の1963年の初夏を舞台とした青春描写だろう。個人的に特に好きなのが、中盤にある『耳をすませば』を連想させる主人公の松崎海と風間俊が自転車を二人乗りして、『上を向いて歩こう』をバックに坂を下るシーン。このシーンは日が暮れ始めた時間帯を描いており、ランプが灯り賑わいを見せている商店街の雰囲気も良い。この時代を生きていた訳でもないのに、どこか懐かしさを感じさせてくれるのだ。自分がその中でもお気に入りなのが、俊がコロッケを2個買って、1個を海に渡すシーン。「あー、こんな青春を送りたかった…」という気分にさせてくれるシーンだ。ただコロッケを渡したあと、俊と海は別々の方向に帰っていくが、そのシーンを踏まえると、どうして俊がコクリコ荘の方を走っていたのかという疑問は残る。

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更に多くの人が評価するのが海の通う高校の男子文化部の部室棟「カルチェラタン」のシーン。本作ではこの部室棟が老朽化による取り壊しを阻止することが物語の主軸となっているが、そのために取り壊し反対派の生徒たちが協力して大掃除をするシーンを本映画の最大の魅力と捉える人も多い。ただ個人的には「カルチェラタン」は掃除する前の薄汚いゴッチャゴッチャした感じの方が好きだったりする。

 

 

  • 幸せになって欲しい海

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本作の主人公・松崎海は朝鮮戦争で機雷に触れて亡くなった船乗りの父を偲んで毎朝庭に旗を揚げているという設定。海は明るく溌剌な性格ではあるが、自分では受け入れてるつもりの父親の死によって何処か影を感じさせるキャラクターだ。海は自分が毎朝旗を揚げていることを学級新聞に取り上げた俊に恋心を抱くが、実は2人が異母兄妹だったことが判明する。ショックを受けた海はその夜、朝起きると海外留学に行って中々会うことができない母親が朝ご飯を作っており、亡くなった父親に出会うという夢を見る。海はその夢を見ながら泣いていたが、布団から起きて涙をそっと手で拭うと、誰もいない静かな食卓でいつものように朝食を作り、雨が降り始める中で旗を揚げ、無表情で傘をさしながら学校に向かう。このシーンは海にとって悲しい日であったにも関わらず、本編冒頭で見せた朝のルーティンと同様のことを表面上はこなしていることで、彼女の強さと切なさを感じさせる。そのため自分はこのシーンを観る度に涙が出るし、「頼むから海には幸せになって欲しい!」と願ってしまう。

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だからこそ東京から横浜に帰るバスを待つ中、海が俊に「風間さん、私、私ね、私が毎日毎日旗を揚げてお父さんを呼んでいたから、お父さんが自分の代わりに風間さんを送ってくれたんだと思うことにしたの。私風間さんが好き。血が繋がっていても、例え兄妹でも、ズッーと好き」と自分の想いを告白し、俊から手を握られ「オレもお前が好きだ」という返事に静かに頷くシーンは本当に感動した。

 

 

  • 異母兄妹の真相

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2人(というか海)に幸せになって欲しいと思う反面、血が繋がっているが故に障害も多いことが予測されるため、「この2人は一体どうやってこの運命を乗り越えていくのだろう…」と複雑な想いを抱えながら鑑賞していくと、「実は異母兄妹ではなかった」という真相が明かされる。正直、これには「あっ、そうなんだ… うん、まー、良かったじゃん… うん…」みたいな感じもしたし、「というか、それなら海の父親は、あんな『察して欲しい』みたいな空気漂わせながら無言で風間に赤ちゃんを渡すのではなく、ちゃんと説明して渡せよ!」という感じも否めず、最後の最後で「海の父親って人としてどうなの?」みたいなノイズが生じる構成になってしまっているのが本当に残念だ。そしてこの結末故に、本作は他者に自信を持ってお薦め出来る作品ではなくなってしまっている。

 

 

  • 最後に…

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最後は少し本作への不満も書いたが、海が父親を偲ぶ意味で揚げている旗に俊への想いを重ね、冒頭ではスルーだった船の汽笛に笑顔を見せるラストシーンは「海、幸せになってよかったね」という温かい気持ちにさせてくれるし、未来への希望を感じさせてくれる。だから自分は色々思うところがあったとしても、この映画が好きであることに変わりはない。

 

(C)2011 高橋千鶴・佐山哲郎・GNDHDDT

 

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