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自分を置いて亡くなったおばあちゃんを許せない杏奈がマーニーとした最後の会話/『思い出のマーニー』ネタバレ感想

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米林宏昌監督の『思い出のマーニー』を公開当時に劇場で観た時は、公開3日目にも関わらず500席以上あるスクリーンで観客は自分1人だけだった。「スタジオジブリ作品にしては入っていない」という話は聞いていたが、それでもその半年前に公開され本作より興行収入が低かった『かぐや姫な物語』でも半分くらいは入っていたのでかなり驚いたのを覚えている。「あっ、ヤバいかもな…」と思いつつ、2時間の映画鑑賞を終えて最初に思い浮かんだ言葉は「何じゃ、こりゃ」だった。主人公の「人に心を開けない」「そういう自分が嫌い」という性格は共感したものの、作品全体としてはイマイチ乗れなかった。劇場から出るといつもいるはずのゴミを回収するスタッフもいなかった。そのシネコンでは1番大きいスクリーンだけ、2階にあるのだが自分が階段を降りているときに慌てた様子で上がってきたスタッフが自分を見た時に苦笑いしながら「ありがとうございました」と言われたのを覚えている。「シネコン側としても1人客のために1番座席数の多いスクリーンで映画上映して大変だよな… これ、逆に0人なら電気代も浮いたのではないか?」など余計なことを考えた。公開当時の自分は人生という大きなレールの上でそこそこ大きなイベントが控えてる段階だったので、映画を観る行為自体があまり褒められるものではなかったという背景もあり、「時間を無駄にしたな」と感じていた。

 

以下ネタバレ

 

 

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ただその1年3ヶ月後に『金曜ロードshow!』でテレビ初放送された本作を観た時、クライマックスで涙が出た。主人公の杏奈は絵を描くのが好きだ。でもその絵を他者に見せることも、色をつけることもしない。彼女の両親は幼い頃に交通事故で亡くなっている。しばらくは祖母に育てられていたが、その祖母も彼女が幼い頃に亡くなった。祖母の葬儀では彼女を誰が育てるかで揉めていた。たらい回し状態だ。彼女はそのトラウマから「自分はいらない子」と思い悩む。杏奈は自信を引き取ってくれた頼子にも疑心暗鬼だ。何故なら自分には内緒で自治体から養育費を貰っていたからだ。これは大人になれば「当然の権利だろ」という話なのだろうが、「自分はいらない子なのではないか?」と常に怯えている杏奈にとってはショックな出来事だった。

 

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人に心を開けず、自分のことが嫌いな杏奈だったが、夏休み期間に喘息の療養のために訪れた田舎町でマーニーに出会い少しずつ他者に心を開くようになっていく。ただ杏奈は信用してたマーニーからも裏切りにあってしまう。彼女は雨が吹き荒れる夢の中でマーニーに「酷いよマーニー どうして私を置いていってしまったの? どうして私を裏切ったの?」と問う。マーニーはその問いに「杏奈お願い 許してくれるって言って」と懇願する。杏奈は答える。「もちろんよ 許してあげる あなたが好きよ」と…

 

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その瞬間、彼女は波に飲み込まれてしまう。そこで彼女は近くにあった小島に這い上がる。すると吹き荒れていた雨は止み、あたり一面が晴れだし光が差し込む。そしてマーニーは笑顔をこちらに向ける。杏奈はマーニーという他者を許すことで、自分のことも許せるようになったのだ。

 

 

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目が覚めた杏奈は養母に手紙を書く。この手紙は映画冒頭でも書いているのだが、そのときは文字だけだった。でも今は違う。そこには色付きの絵が描いてある。そしてこの色を塗ったのは、彼女が養母が養育費を貰っていると知った日に養母から貰った色鉛筆でだった。彼女は自分を許し、他者を許すことで人生に彩りが出始めた。あの絵は彼女の心の変化を表していた。杏奈は最後、今まで「おばちゃん」と呼んでた養母のことを「母です」と紹介する。地味なシーンだが、涙が止まらなかった。

 

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杏奈の成長のキッカケとなったマーニーは、幼少期の彼女を育っててくれていたおばあちゃんだった。マーニーは病気で自分の子供の育てることができず、そのことで娘から恨まれていた。だから娘が交通事故で亡くなり、孫の杏奈が独りになったとき「この子だけには寂しい思いをさせない」と引き取っていたのだ。そしてマーニーは幼少期の杏奈に毎晩自分の子供の頃の話をしていた。つまりマーニーは杏奈の「思い出の中の存在」だったのだ。

 

 

マーニーは杏奈を引き取った後に、すぐ亡くなってしまったことで、娘に引き続き孫にも寂しい思いをさせることになってしまった。ただそんな彼女を救ったのは、マーニーが彼女のことを想い育てた短い期間の「思い出」からだった。杏奈はマーニーに自分を置いて亡くなったおばあちゃんを「許さない」と怒りを見せた。そのことを踏まえて杏奈とマーニーの最後の会話を振り返って欲しい。

 

杏奈「酷いよマーニー どうして私を置いていってしまったの? どうして私を裏切ったの?」

マーニー「杏奈お願い 許してくれるって言って」

杏奈「もちろんよ 許してあげる あなたが好きよ」

 

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