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夢のないフリーター女子が「幸せな人生のループ」求めて婚活開始 東村アキコ『東京タラレバ娘 シーズン2』感想

東京タラレバ娘 シーズン2(1) (Kissコミックス)

吉高由里子主演でテレビドラマ化もされた累計発行部数500万部を超える東村アキコのヒット作品『東京タラレバ娘』の「シーズン2」が始まった。前作の主人公は「6年後の東京オリンピックで40歳になる33歳」「結婚願望は強くて焦ってるけど、女友達と居酒屋で『タラレバ』ばかりいって努力はしてない」「大学卒業後、夢であった脚本家の仕事をして自立している」という感じであったが、今回の主人公は「ギリギリ昭和生まれのため、早くも『昭和』『平成』『令和』という3つの時代を生きた30歳」「結婚願望も夢もなく、短大卒業後はフリーターしながら実家暮らし」「だからといって現状に不満があるわけでもない」みたいな感じ。

 

  • Netflixで海外ドラマや映画を観る日常

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<出典:東村アキコ/講談社>

個人的な女性の好みとしては前作の主人公のが好きだけど、本作の主人公の方が世代が近いからなのか共感できるポイントも多い。象徴的なのは生活スタイル。主人公はフリーターだからお金はないけど、コンビニのカフェラテとスイーツを買って、家のソファーで寝っ転がりながらNetflixで映画や海外ドラマを観て、眠くなったら寝落ちする生活にそれなりの幸せを感じている。別に青山のお洒落なカフェに行って楽しみたいとか、そういう願望が全然ない。もちろん派遣バイトの経験くらいしかない真っ白な履歴書を見たり、ソファーで横になっているときに、ふと「これでいいのかな…」なんて思ったりしても、そこそこの現状に満足している。彼女は上の世代から「小さい世界で完結していて、つまらなくないの?」と問われても、あまり気にしない性格。そんな感じの主人公には何となく共感を覚える。

 

 

  • 夢があった東村アキコ先生が描く「夢のない女子」

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<出典:東村アキコ/講談社>

今回の主人公は前述した通り、夢もない。彼女は子供の頃から「憧れの仕事」どころか、これといって「着たい服」とかもなかった。だから主人公は小学校の同窓会でタイムカプセルを掘り返す誘いを受けてから、考え始める。「子供の頃 何か『コレだ』ってものに出会ってれば 私 今こんなにフラフラしてなかったのかな」と。東村アキコ先生は『かくかくしかじか』で、「子供の頃から少女漫画が大好きで物心ついた時には『自分は少女漫画になる!』と決めていた」としている。つまり本作の主人公は東村アキコ先生とは真逆のタイプということになる。そんな東村アキコ先生が、こういうモノローグを書いているのは面白く感じる。

 

  • 必要以上に周囲に配慮して釈明するモノローグ

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<出典:東村アキコ/講談社>

本作の主人公は恋愛に積極的ではない、というよりは恋愛を特別したいとも思っていない。そんな彼女も本作ではあるキッカケから「自分の夢」を「結婚して楽しい家族を作って楽しく暮らす」と決める。今の時代の流れとは逆行するような「夢」ではあるが、個人の「夢」は時代の流れとは関係なく尊重されるべきだろう。ちなみに主人公は何故か唐突に「生きるか死ぬかの瀬戸際で大変な国の人たち」に対して「私の人生の問題だから 私がこれからどう生きたいかって話だから」と脳内で釈明し始める。自分の生き方一つ決めるのにも、必要以上に周囲に配慮してよく分からない釈明をしてしまう思考、叩かれる前に保険をかけにいく感じは個人的にはとても共感できた。

 

  • 結婚は「幸せな人生のループ」

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<出典:東村アキコ/講談社>

話はやや逸れたが、そんなこんで彼女は夢を叶えるために婚活を始めるのだが、彼女が結婚をしたい最大の理由は「幸せな人生のループ」だ。彼女は小さい頃、「季節の行事をちゃんとやるタイプの親」のもとで過ごしていた。しかし成長するに従って、季節の行事から離れていった。だから結婚して子供を作って、もう一度自分が子供の頃のときのように「季節の行事」をやろうと考えたのだ。東村アキコ先生はインタビューで本作のテーマについて、以下のように語る。

人としての喜びって、文化的に生きるってことだと思うんですよ。それってどういうことかっていうと行事なんですよ。四季の行事! お正月、お盆とかずっと続いてきたことをやる、もちろんクリスマスとかハロウィンでも何でもいいんですけど、行事はやったほうがいいよって思うんですよ。これは理屈とか宗教じゃなくて。でも、独身だと行事から離れていくのね、どうしても。そうならないためには、結婚するのもアリだよ、と。もし子供が生まれたら絶対やらなきゃいけなくなるし。

東村アキコインタビュー!「誰もやってない」新作のテーマとは? | FRIDAYデジタル

個人的には「季節の行事とかそんな…」というタイプではあるのだが、確かに「お正月にお餅を食べる」とか「クリスマスにチキンを食べる」レベルだとしても、それを「やる」か「やらないか」では全然人生の充実度というか、「生きている」感じみたいのは違うような気がする。だから本作のテーマは「時代錯誤」という感じがしないでもないんだけど、「結婚どうこう」の問題は一回置いといて「季節の行事」に「人としての喜び」を見出す考え方は、何だか凄い大切なことに気付かされた感があったし、「人としての喜び」なんて「実は気付いていないだけで、そこら中に沢山転がっているんじゃないの」みたいな、少し生きる希望が持てるような気分にさせてくれたのはありがたいなと感じたりした。

 

 

  • デートで露呈する「ダメな日常」

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<出典:東村アキコ/講談社>

一方で彼女が経験を積むために複数の男性とデートをするシーンでは大きなダメージを喰らわされた。彼女はデートでは男性から「お休みの日はなにして過ごしているんですか?」と問われても、「家でゴロゴロしてます… ドラマ観たりとか…」という答えしか返せない。そのうえ相手が自分の話に合わせて「何かハマっているドラマがあるんですか?」と話を掘り下げようとしてくれても、主人公は「そうですね… まあ その… 話題になっているやつを色々… 何でも観ますね」と具体的な作品名は挙げられない。結局彼女はそのデートでは自分の話ができないまま終わってしまう。

後日、彼女は別の男性と映画館デートをする。そこでは人気シリーズの最新作を鑑賞することになるのだが、相手はその映画を1本も観たことがなかった。そのため映画鑑賞後に彼女は相手にこれまでのシリーズ内容を面白く説明しようと試みた。しかし彼女は観たはずの映画の内容を思い出すことができず、うまく説明することができなかった。彼女は映画や海外ドラマを大量に観ていたが、それは暇つぶしとして流し観していたに過ぎず、全然内容を覚えていなかったのだ。つまり彼女は日常の大半をNetflixに費やしておきながら、映画や海外ドラマの話すらマトモにできなかったのだ。この2つのデートを通して、彼女は自分が如何に堕落した日常を送っていたのか、そしてその生活を続ける中で如何につまらない人間になってしまったのかを思い知らされる。

これは「どんな映画観るの?」とか「漫画読むの?」と聞かれた際に「一応話題作はチェックしてます」とクソつまらない回答をしておきながら、いざ向こうの好きな作品を聞いても「そもそも触れていなかったり」、「一通り触れていたとしても全く内容を思い出せなかったり」して気まずい想いをしたことが多い自分には突き刺さる。結局、いくら映画や漫画に触れても実人生に還元できていないから人間としての魅力には全く繋がっていない。自分はこのエピソードを読みながら主人公と同じようにダメージを喰らったが、実際に行動した彼女に対して自分は漫画を読んでいたに過ぎない。そのため自分も彼女のように恥を覚悟で行動して、ステップアップしていかないとダメだなと反省した。

 

 

  • 最後に…

東村アキコ先生のインタビューによると、本作は「そもそも恋に落ちれるのか?」というのもテーマの一つらしいけど、そこら辺も含めて今後どういう展開を見せるのか楽しみにしていきたいと感じた。

 

 

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