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「感情表に出さない青年」「染谷将太の怪演」「苦肉のアニメ演出」三池崇史監督最新作『初恋』感想

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三池崇史監督最新作『初恋』を観た。

 

  • 三池監督「あの頃のように撮りたいものを…」

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三池崇史監督の作品はここ5年、『テラフォーマーズ』『土竜の唄 香港狂騒曲』『無限の住人』『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』『ラプラスの魔女』など漫画や小説を人気俳優を使って実写映画化する企画が続いていた。個人的に上述した5作品は『テラフォーマーズ』を除けば、どれも結構好きな作品ではあるのだが、世間的には「ダメ映画量産監督」というイメージも強い。特に『テラフォーマーズ』が興行的にも批評的にも失敗した後に、『ジョジョ』の監督が三池監督だと発表されるとネット上では監督名を持って「駄作認定」をするようなコメントも多かった。

一方で三池崇史監督はメジャー路線の大作映画を任されるようになる前は、Vシネで活躍しており高い評価を得ていた。その時代を知る三池ファンからすれば、近年の三池作品には物足りなさを感じているという声も少なくない。そのため近年の三池崇史監督作品は世間から高く評価をされる訳でもなく、映画が興行的に大ヒットする訳でもなく、ライト層からもコアなファンからもそっぽを向かれるような形になっていた。

ただし近年の作品に一番「物足りなさ」を感じていた人物は他ならぬ三池崇史監督自身なのではないかと、『初恋』のインタビューから読み取れる。

“仁義なき戦い”シリーズや“実録シリーズ”で鳴らした東映が、2018年『孤狼の血』を送り出し、その流れで三池監督と“面白いものがやりたい”という思いの波長が合った

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多くの観客が求めているものを作るのも、もちろん大事なことです。ただ、そういう動きをしながらも、あの頃のように、撮りたいものを撮って発信していくことで、少しでも自分たちの居場所をキープしていくべきではないか

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映画化に際しても、「原作の魅力を守る」ことや「今どきの観客の好み」がまず優先され、製作にはさまざまな制限がかけられる。「良くないと思いながら、皆、何となく巻き込まれて、大きくはみ出すことなく作っている」と嘆く。「規制」は俳優にも及び、「役そのものに縛りができている」。

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三池崇史監督は大作映画を立て続けに任されるなど、映画業界からの信頼されている存在なのだろう。一方で大作映画ほど縛りは多くなり、自分が撮りたいように撮れない場面も多いはずだ。そういう商業監督が、この手の発言をしてオリジナル脚本で勝負するというなら応援したくなる。そのため自分は公開初日に劇場に向かった。

 

 

以下ネタバレ注意

 

  • 染谷将太の怪演が光るバイオレンスコメディ

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本作は全米大手批評サイト「ロッテントマト」で批評家支持率97%と高評価を納めており、フレッシュ認定となっている。一方で自分は「任侠映画」のようなジャンルには惹かれるタイプの人間ではない。そのため観る前は「正直、自分の好みとは合わないかもな…」とも思っていた。しかしオープニングから首が吹っ飛ぶ映像を観て「コレは、イケる」と確信して、その後も濃いキャラクターたちが繰り広げるバイオレンスコメディに心躍らせながら鑑賞した。特に染谷将太さんが演じる加瀬は個人的にはツボで、拳銃で撃たれた傷口に薬を塗り込んで「全然痛くねー!」とラリってる様子は笑いが止まらなかったし、自分の吹っ飛んだ腕から拳銃を取ろうとしながら「アレ、硬くて中々取れないなー」とか言ってる様子も最高だった。吹っ飛ばされた首についた顔が相変わらずラリってて笑っているシーンでは場内のガラの悪い観客たちがゲラゲラ笑っていて、映画体験としても良かった。三池崇史監督作品はやっぱり主人公サイドの人間より悪役の方が魅力的に描かれる。

 

  • 勝っても感情表に出さない青年が…

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ストーリーも良かった。窪田正孝さんが演じる主人公・レオは天才ボクサーという設定だが、試合に勝っても感情を表に出して喜ぶということはしない。指導者はその点を指摘するも「世代の違い」ということで、一定の理解を示す。一方でレオはその点を持って今後何処かで躓くのではないかという不安を持ち合わせている。しかしレオは「余命わずかだという誤診」と「ヤクザのイザコザに巻き込まれる」ことによって、「死ぬ気で生きること」の大切さを学ぶ。だからラストで試合を勝ったシーンでレオは、オープニングの試合で勝った後とは打って変わって感情を表に出して喜んでいる。多分アレが「生きている」ということなのだろう。

 

 

  • アニメ演出は「苦肉の策」

その一方で個人的にこの映画の中でトップレベルに好きなアニメーションを使ったカーアクションシーンは、スタントマンが高齢化した影響による「苦肉の策」だったというのは残念だ。三池崇史監督によると「スタントマンの高齢化や予算の関係で脚本にあるシーンを削ったり、変えたりするのはよくない」と考え、「そういう理由から脚本を変えようとする今の日本の映画業界に反抗する意味」でも今回のアニメーション演出に繋がったという。自分はこの手の突飛な演出が大好物なのだが、そういう理由での演出だったのなら三池崇史監督が語るように「複雑な気持ち」にもなる。今回の三池崇史監督作品は久々に監督が好き勝手やったタイプの映画だと思ったが、このレベルの作品でも色々と制約があったようだ。

 

 

  • 最後に…

三池崇史監督の次回作に驚いた。

 

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