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「ブン投げEND」「バッドエンド」と捉える人の気持ちが分からない『恋は雨上がりのように』の結末

恋は雨上がりのように(1) (ビッグコミックス)

<注意>『恋は雨上がりのように』のネタバレ

今更ながら『恋は雨上がりのように』を読んだ。

 

本作は眉月じゅん先生が2014年から2018年まで『ビッグコミックスピリッツ』(連載初期は『月刊!スピリッツ』)で連載されていた人気漫画。「2015年度コミックナタリー大賞」で第2位、「第63回『小学館漫画賞』(一般向け部門)」を受賞、「このマンガがすごい!2016オトコ編」第4位と高い評価を受けていた。

 

 

一方で本作の結末に対してネット上では「ブン投げEND」「バッドエンド」と厳しい声をみることも少なくない。本作の物語は17歳の女子高生がバイト先のファミレスの店長(45歳)に恋をするというもの。「果たしてどういう結末だったのか?」とかねてより気になっていたので、このタイミングで一気読みしてみた。

 

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<出典:眉月じゅん/小学館>

「思ったより絵が古いから、昔のマンガを読んでるみたいだ…」などと思いながら一気読みした結果、どうして炎上したのかがサッパリ分からないほど綺麗に終わっていた。ファミレスの店長に恋する女子高生は、陸上の才能を持っているがアキレス腱を怪我したことで陸上の世界から一時的に離れなくではいけないという背景を持つ。彼女は「陸上ができない」ことに対して虚しさを感じていたときに偶々雨宿りしてたファミレスで、店長がブラックコーヒーのサービスと簡単なマジックでミルクをくれたことで恋に落ちる。そこからは「彼女の店長に対する恋心」や「年下の女性に恋されることで、若い気持ちを取り戻していく店長」、そして「怪我によって離れた陸上に戻りたいという気持ちを持ちながら、中々自分の気持ちを整理することができない彼女の葛藤」が描かれていく。

 

 

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<出典:眉月じゅん/小学館>

本作を「ブン投げEND」「バッドエンド」などと捉える人はおそらく本作を彼女と店長のラブストーリーとして読んでいたからだろう。もちろんこの物語は彼女と店長のラブストーリーではあるが、本作で作者が一番伝えたかったことは「好きなことを続ける」だったのではないかと思う。何故なら彼女は「再び走りたい」という気持ちを持ちながら、中々陸上部への復帰の決意はつかずにいた。彼女は店長に対して、「もしも仲間と一緒に飛び立てなかったツバメがいたらどうなるのか?」と問う。夢捨てきれずに小説を書き続ける店長は「飛び立てなくても、その地にとどまって得る幸せもあるかもしれないね。でも、そのツバメが飛び立たなかった理由がただの諦めであったとしたら、きっと毎日、空を見上げることになる。」と答える。彼女は「走りたい」という想いから、いつも空を見上げていた。しかし彼女は中々決心がつかずにバイトのシフトを増やして、自らを走ることから遠ざけていた。そのことに気付いていた店長は、「また走りたい」という気持ちを持つ彼女の背中をそっと押してあげようとする。

 

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<出典:眉月じゅん/小学館>

それでも彼女は決心がつかず、店長との距離を縮めようとしてくる。そして店長も彼女は陸上に復帰した方がいいと考えながら、彼女に惹かれていってしまう。だから店長は彼女が手編みのマフラーと手紙を渡してきた日、彼女に「橘さんはもう、走らないの?」と尋ねる。そして彼女に「これ以上俺が橘さんにできることは何もないよ。」と突き放す。もちろんこの突き放し、彼女のためだ。自分についてきても何もない、でも彼女には「待たせたもの」があるのではないかと問いかける。彼女は一筋の涙と共に「走りたい…!」と本音を打ち明ける。それは丁度雪が雨に変わった瞬間だった。

 

 

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<出典:眉月じゅん/小学館>

雨が降る車の中で、彼女と店長の最後の会話が始まる。彼女は今日の日のことを「忘れない」とするが、店長は「橘さんは忘れたっていいんだ。」とする。店長は若い彼女にとって、この出来事は長い人生の中の1エピソードに過ぎず「きっと忘れる」、否「忘れた方が健全」とすら思っている。これからも「その地にとどまり続ける」店長にとってこの日の出来事は一生忘れられないだろう。ただこれから飛び立ち色んなことを経験する彼女にとっては、きっと今日の出来事をいつか忘れてしまう… そんな切なさを持って彼女と店長の会話は終わる。

 

最終回、陸上に復帰した彼女は大会で新記録をマークして仲間たちと笑顔でいる。一方で店長は小説が評価されるわけでもなく、出世するわけでもなくファミレスの店長を続けている。

 

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<出典:眉月じゅん/小学館>

物語の最後で彼女は日傘を開く。それが店長が最後に彼女に渡したものなのかも、彼女が店長のことを覚えているのかも劇中では明示されない。でもきっとその日傘は「雨」の下より「青空」の下の方が彼女には似合うという店長からのメッセージだったのではないかと思う。そしていつか彼女が店長のことを忘れてしまったとしても、彼女が「再び走ろう」と思うことができた店長との日々が消えることはない。きっと人生は色々な体験の積み重ねなのだから…

 

恋は雨上がりのように(1) (ビッグコミックス)

恋は雨上がりのように(1) (ビッグコミックス)

  • 作者:眉月じゅん
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/04/03
  • メディア: Kindle版
 

 

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