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アカデミー作品賞『パラサイト』で「日本映画」が話題 批判の矛先は「漫画の実写化・ドラマの劇場版」

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アカデミー賞の作品賞を韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が受賞した。アカデミー作品賞でアジア映画が受賞するのは史上初で、「歴史的快挙」として話題になっている。そんな中で話題になるのが「日本映画」。「韓国映画が世界的に評価されたのだから日本映画も!」ということなのだろうが、どうにも「日本映画がダメな理由」を「人気漫画の実写映画版」や「テレビドラマの劇場版」に向ける声が多いように感じる。

 

  • 「商業作品」は「商業作品」として良くね?

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去年の実写邦画の興行収入10億円超え作品を調べてみると、オリジナル作品は三谷幸喜監督の『記憶にございません!』一本のみ。大多数を「漫画の実写映画」「ドラマの劇場版」、そして「小説の実写映画」が占めている。ただここら辺のエンタメ重視の商業作品は狙ったターゲットに向けて的確なボールを投げてヒットを飛ばしている訳だし、「こういう映画がヒットしてるから日本映画はダメなんだ!」みたいにするのもおかしな気がする。それよりこの手の作品が「ライト層を劇場に向わせるキッカケ」「ライト層が映画前の予告編を強制的に観せられることで、興味のなかった映画を知るキッカケ」とポジティブに捉えた方がいいのではないか?そもそも日本映画を盛り上げるという意味では現在ヒットしているタイプの映画から「パイを奪う」という発想ではなく、「そのパイ自体を広げる」という発想の方が健全な気がする。

 

 

  • 『ジョーカー』が作品賞にノミネート

ジョーカー(字幕版)

「アイリッシュマン」オリジナル・サウンドトラック

そもそも今年のアカデミー賞はアメコミ映画の『ジョーカー』が作品賞にノミネートしていて、こちらの方も「歴史的快挙」という扱いだった。また昨年に引き続きNetflix製作のオリジナル映画『アイリッシュマン』も作品賞にノミネート。今年のアカデミー賞はこの3作品のどれかが受賞すれば「歴史的快挙」だったわけだし、それ以前に「今までは蚊帳の外だったアジア映画」「何となく下に見られがちなアメコミ映画」「未だ映画として認めない人も多いNetflix製作オリジナル映画」の3作品がノミネートされてる時点で多様性を感じる。そしてこの多様性こそが今年のアカデミー賞が例年より注目された理由な訳だが、それにも関わらず個々の作品批判ならともかく「日本映画がダメなのは漫画の実写映画やドラマの劇場版ばかりに頼ってるから」という批判は如何なものか?勿論オリジナル作品のヒットが少ないのは残念なことだし、あまりにも漫画の実写映画やドラマの劇場版ばかりだと「…」とも思わなくもないが、多様性の観点からはそれらの映画を一括りにして「ダメだ」というような発言はズレているのではないかと感じる。

 

 

  • 『万引き家族』のヒットとフジテレビ

万引き家族

こういう話題の時に「日本映画だって頑張ってるんだぞ!」という代表例であげられるのが一昨年パルムドールを受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』。本作は興行収入45.5億円の大ヒットを記録して、地上波初放送時の視聴率も12.3%を記録した。このヒットに対して「これは日本映画ではなく、是枝裕和監督が頑張ってるだけ」と主張をする人がいるわけだし、実際是枝裕和監督の功績が大きいと個人的にも思う。ただフジテレビが『そして父になる』から是枝裕和監督作品に出資していることも忘れてはいけない。『そして父になる』製作当時の映画事業部のトップは『踊る大捜査線』などで知られる亀山千広さんだったが、彼は過去に以下のような発言している。

僕はハリウッドの人間ではないので本当のところは分かりませんが、こちらから垣間見える雰囲気で言うと、向こうは娯楽作品と芸術作品が共存しているように見えます。なぜそれが可能かというと、まずビジネスがベースにあるからです。

(中略)

商業的に成功しなければ、何も始りません。それがあって初めて芸術作品が生まれてきたり、新人監督が脚光を浴びるようになったりするんです。もしビジネスとしての映画が崩れたら、映画文化は停滞してしまう。新人監督が出てくることもないだろうし、芸術作品がスポットライトを当てられることもなくなってしまうでしょう。だからまずは、ビジネスのベースがしっかりできていることが重要なのです。 

<出典:「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか?」/日本映画チャンネル>

そして『そして父になる』がカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した際は以下のようなコメントをしている。

フジテレビの映画事業にとって、今年はこの10年の集大成になりました。あくまで利益を上げることが命題ですが、人や意欲作に先行投資することもできた。その結果、「そして父になる」のような作品が生まれました。

【話の肖像画】フジテレビ社長・亀山千広(57)(1) - 産経ニュース

つまり『踊る大捜査線』の劇場版とかで儲けた分を是枝裕和監督作品に投資したという構図なる。そして是枝裕和監督作品のヒットの裏にはフジテレビの宣伝力や過去作品をゴールデンタイムに繰り返し放送することで一般知名度を高めていった部分も間違いなくあると感じる。だから儲かってる映画企業は、このように才能あるクリエーターたちに出資したり、宣伝などでアシストしたりするのとで力を発揮しやすい環境作りをすることが大切だと思う。そのため安易にテレビ局製作の商業作品を批判するより、その儲けがどう使われていくかの方が重要だと考える。ただどこもそこまでの余裕はないだろうし、難しいのだろうなとも思う。現に『万引き家族』もパルムドール受賞前の興行見込みは7億円とかだったらしいから、「下手に挑戦してコケるより、手堅く漫画や小説・ドラマの映画版で10〜15億円儲けた方が…」という気持ちになるのもよくわかる。

 

 

  • 最後に…

www.asahi.com

日本映画を擁護してるような記事になったが、昨日TBSテレビの『NEWS23』でカズ・ヒロさんが「日本の文化が嫌に」という発言をしている時に彼の横にいた海外の女性2人が笑っていたのを見て「あー、やっぱり世界から見ても日本ってそういうイメージなのか…」と残念になった。ちなみに日テレの『news zero』ではそのシーンは放送されずに「日本人受賞!」みたいなノリで放送していて観ていて違和感を感じた。

www.wowkorea.jp

また今回作品賞を受賞した『パラサイト』は勤労基準を順守した撮影が行われたという。日本では体育会の精神論に基づいた指導法を厳しく糾弾する文化人が平然と自分の分野では同じ精神論を唱えたりするのをよく見るので、この辺りからも学ぶべきことが多くありそうだ。

 

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