2010年代「3D映画の旅」

2009年にジェームズ・キャメロン監督作品『アバター』が公開されて10年。当時日本では「3D元年」と称され、映画に限らず「3Dテレビ」「3DS」「3D新聞」など3Dブームが到来。そんな「3D元年」から今年で10年。3D映画の10年と現在は…

 

  • 『アバター』公開で3Dブーム到来

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今から10年前の2009年12月、ジェームズ・キャメロン監督作品『アバター』が世界中で公開された。日本でのキャッチコピーは「観るのではない。そこにいるのだ。」であり、『アバター』は「フュージョン・カメラ・システム」という奥行きある3D映像を撮影するために1台のカメラ本体に2台の「ハイ・ディフィニション・カメラ」を使用したキャメロンが独自開発したカメラシステムで撮影を行い、奥行きある3D映像の撮影に成功。観客が「パンドラに自分が本当にいる」と体験をさせることで、「3D映画=飛び出す映画」という従来の価値観を大きく変えた。『アバター』は世界興行27億ドルを超える記録的な大ヒットとなり、当時の全世界興行収入の記録を更新した。

 

  • 3D変換映画『アリス・イン・ワンダーランド』

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『アバター』の記録的なヒットに続く形で公開された3D映画が、ティム・バートン監督・ジョニー・デップ主演の『アリス・イン・ワンダーランド』だった。本作は3Dカメラで撮影した『アバター』と異なり、2D撮影された映像をポスト・プロダクションで3D映像に変換する いう方法が採用された。そのため『アバター』に対して3D映画としての魅力は劣り、尚且つ3Dメガネを通すことで色彩豊かなワンダーランドの世界が暗くなるというデメリットが目立った。一方で世界興行は10億ドルを超える大ヒットとなっており、映画業界に「3D映画は儲かる」ということを証明してみせた。

 

  • 3D映画連発も…

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2010年は『アバター』の大ヒットにより『トイ・ストーリー3』『ヒックとドラゴン』『エア・ベンダー』『バイオハザードIV アフターライフ』『怪盗グルーの月泥棒』『トロン:レガシー』など数々の3D映画が公開され、一部作品を除けば大ヒットを記録した。一方で3Dブームに乗っかる形で2D映画として撮影された作品を、急遽ポスト・プロダクションで3D映像に変換して公開する『タイタンの戦い』のようなケースも多発した。そのタイプの作品は3D用に撮影されたわけではないため、3D映画としてのクオリティは低く3D映画のイメージを悪くすることになる。ただし『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』のように「公開日までに完全な形での3Dバージョンへの変換はできない」という理由から、3D版の公開中止となったケースもあった。

 

  • 日本初の大作3D映画『海猿』

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日本初の大作3D映画は2010年公開のフジテレビ製作『THE LAST MESSAGE 海猿』であり、2D映画用に撮影された映像を急遽を製作費1.5倍まで増やして3D映像に変換した作品だった。そのため流行を敏感に察知して、予算を注ぎ込み3D映画に挑戦したフジテレビの姿勢は評価したいが、3D映画としてのクオリティは褒められるものではなく、朝の情報番組の宣伝で「東宝マークが一番3Dだった」という発言が出るレベルだった。しかし本作は興行収入80.4億円の大ヒットを記録。更に3Dシェア率は74.1%と高い数字をマークしており、この映画を持って初めての3D映画体験して失望したというケースも多かったということが予想される。

 

 

  • 3D映画が『トランスフォーマー』で本領発揮

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2011年は『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』が3D映画として公開されて大ヒットを記録する反面、「別に3Dじゃなくてもよくね?」というムードが漂い始めた頃だった。そのタイミングで公開されたのがマイケル・ベイ監督作品『トランスフォーマー ダーク・サイド・ムーン』だった。マイケル・ベイ監督は当初『トランスフォーマー』を3D化することに反対だったが、ジェームズ・キャメロン監督とスティーヴン・スピルバーグ監督の説得により3D映画化することが決定。映像の60%以上を『アバター』で使用された3Dカメラで撮影する本格3D映画に挑戦した。また本作は『アバター』と異なり、実写映像をベースにすることでリアルで迫力のある奥行きと、観客が本来求めていた飛び出す3Dアクションを実現。日本での3Dシェア率は『アバター』を超える91%という高い数値を叩き出し、世界興行も11億ドルを超える大ヒットとなった。またマイケル・ベイ監督の『トランスフォーマー』シリーズは2014年公開の4作目『ロスト・エイジ』で映画史上で初めて全編をIMAX3Dカメラで撮影、2017年公開『最後の騎士王』で予算を16億円追加して人間の目と同様に2台のIMAX3Dカメラを使って撮影するなど常に3D映画に進化に貢献。一方で 3Dシェア率は4作目が84.8%、5作目が50.0%と右肩下がりの傾向にある。それでも日本の3Dシェア率としては驚異的な数字を維持しているシリーズとなっている。

 

  • 日本では山崎貴監督が3D映画に挑戦するも…

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マイケル・ベイ監督が『トランスフォーマー ダーク・サイド・ムーン』で本格的な3D映画を実現させた翌年の2012年、日本映画界ではVFXの第一人者である山崎貴監督が『ALWAYS 三丁目の夕日’64』で3D映画に挑戦した。山崎貴監督は2D撮影した映像を3D化する方法ではなく、3Dカメラで撮影する本格3D映画の道を選択。また3D映画の醍醐味は奥行きでだけでなく、飛び出すことも含まれているとして、「奥行きだけでなく、飛び出す楽しさもある3D映画」を目指した。そのため完成した作品は「飛び出る東京タワー」「飛び出るご飯粒」「飛び出る赤トンボ」「飛び出る飛行機」など「飛び出る」演出が多用されている。また「飛び出る」演出だけでなく、昭和の街並みを3Dで奥行きを見せる演出にも成功。ただしVFXで作り込んだ見せ場のシーンに対して、セット内での人情話のパートでは3D映像の意味を見出すことは難しく、作品自体が年配層から支持されていたこともあり3Dシェア率は低かった。そのため山崎貴監督の挑戦は多くの観客には届かず、 3Dシェア率が低かったことが大きく報道されたことなどから「日本で3D映画は流行っていない」というイメージを決定的にしてしまった作品となってしまった。

 

  • 映画史を3Dで描いた『ヒューゴの不思議な発明』

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「映画を3Dにする意味」が問われる中、2012年にはマーティン・スコセッシ監督初の3D映画『ヒューゴの不思議な発明』が公開された。本作は古い映画を知らない若い世代が映画の歴史を辿っていく形で物語が進行するが、その要所要所に世界で初めて上映された映画『ラ・シオタ駅への列車の到着』を連想させるような列車暴走事故や数々の映画でオマージュされた『ロイドの要心無用』の「時計からぶら下がるシーン」を連想させるようなシーンを最新の3D映像を使って描いている。つまり昔観客を驚かせた映像を現在の最新技術を使って映像を再現することで、「映画体感」の素晴らしさを思い起こさせる映画に仕上がっているというわけだ。一方で本作は製作費1.80億ドルに対して、世界興行は1.82億ドルと約8000万ドルの赤字となっている。

 

 

  • 「3Dにする意味がある映画」がヒット

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2012年くらいまでは3D映画にすることで大ヒットにつながる映画も多かったが、2013年辺りから観客も「大半の3D映画は3Dである意味がない」と悟りヒットに繋がらなくなってきた。それどころか3D上映を避ける観客も増えてきて、シネコン側も3D上映の回数を減らしていった。そのため2013年以降で3D映画としてヒットを残したのは上述した『トランスフォーマー』シリーズを除けば、ビルとの距離感を演出して飛行シーンで爽快感を演出した『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ、海難事故でトラと漂流した少年の体験を描いた『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』、無重力状態の宇宙を表現した『ゼロ・グラビティ』、山崎貴監督がドラえもんを3DCGアニメ化した『STAND BY ME ドラえもん』、マイケル・ベイ製作のカメ忍者アクション『ミュータント・タートルズ』、1996年に起きた大量遭難事故を描いた『エベレスト 3D』、ワールドトレードセンターを綱渡りした男の実話を描いた『ザ・ウォーク』、オバケがスクリーンが飛び出してくる『ゴースト・バスターズ』、 3DメガネをVRに見立ててゲームの世界に入ることを体験できる『レディ・プレイヤー1』、ジェームズ・キャメロン製作の『アリータ:バトル・エンジェル』、アメコミのアニメ化『スパイダーマン スパイダーバース』など「3Dにする意味」が見出せる映画が話題になりヒットに繋がるようになった。3D映画の上映が減ったのは残念だが、「3Dの意味を見出せない」映画が次々とヒットする反面、観客が失望する2010年代前半よりは、現在の状況の方が恵まれているのかもしれない。

 

※2019年はジェームズ・キャメロン製作の『ターミネーター ニュー・フェイト』が11月に公開される。現在3D上映の話題はないが、『ターミネーター2』を3Dでリバイバル上映していることからも個人的には少し期待している。

 

  • 水の3D表現に挑戦する『アバター2』

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『アバター』公開以降の3D映画10年の歴史をザックリ振り返ったが、2020年以降3D映画として注目すべきなのはやはりジェームズ・キャメロン監督最新作『アバター2』だ。『アバター2』では世界で初めて水中でモーションキャプチャー撮影を行い、パンドラに住む「水の民」の生活を描くという。水中アクションを3Dで描く映画は今年『アクアマン』が公開されたが、水の表現は特殊効果に過ぎない。キャメロンが本物の水を使い、CGと融合させることで完成する3D映像が観客のどの程度のインパクトを与えるかは未知数だが、個人的には期待せずにはいられない。一方でやはり10年前の『アバター』1作目の本格3D映像のインパクトには劣る印象を受ける。実際映像を観て、「これは映画館で3Dで体験したい!」と思わせる映像が公開されることを願って、2021年12月を待ちたいと思う。

 

 

  • 最後に…

日本の大作映画でも山崎貴監督辺りに再び3D映画を挑戦して貰いたいものだ。

 

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