『金田一37歳の事件簿』 少年誌から青年誌に移籍したことで変わった「犯人が殺人に至った動機」

金田一37歳の事件簿(1) (イブニングコミックス)

ミステリー漫画の金字塔『金田一少年の事件簿』の続編『金田一37歳の事件簿』を読んだ。

 

金田一少年の事件簿 File(1) (週刊少年マガジンコミックス)

『金田一少年の事件簿』はミステリー漫画の先駆けとなった作品であり、不定期連載の期間を含めれば四半世紀にわたり『週刊少年マガジン』の看板として連載された作品。コミックス累計発行部数は1億部を超えて、テレビアニメ化・実写化・映画化・ゲーム化など様々なメディア展開もしてきたヒット作だ。

自分は「舞台設定の上手さ」と「本当に怪人が殺しているのではないかと思わせるような不可解な殺人事件の演出」、それでいて金田一少年が謎を解けば「誰にでも簡単に出来そうな人間の思い込みを使った心理トリック」だったという意外性、そして「犯行を認めた後に語られる誰もが同情したくなるような犯人が犯行に及ぶまでに至った悲劇的なエピソード」、また「トリックのヒントを描写しているフェアな演出」などに『金田一少年の事件簿』の魅力を感じていた。

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<出典:天樹征丸・さとうふみや/講談社>

ただ近年のシリーズ、特に2017年から連載開始された『R(リターンズ)』では、もはや原作者が思い付いたトリックを成立させるために作られたことが丸分かりな舞台設定が提示されたりして、結構ゲンナリしていた。

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<出典:天樹征丸・さとうふみや/講談社>

また長期連載化に伴い、「地獄の傀儡師」高遠遙一の登場スパンをドンドン短くなる上に、自らが計画した芸術的犯罪計画を失敗させた犯人を自らの手で殺すみたいな設定は「あったり」「なかったり」とブレブレになっていくし、金田一と美雪の関係もどの設定が「残っていて」どの設定が「なかったこと」になったかよく分からない状態で物語が進み、挙げ句の果てに美雪が「死体を見るのに慣れちゃった」みたいな感じで舌を出す始末。連載初期のクオリティを考えれば見るに耐えないクオリティのシリーズが続いた。

 

 

イブニング 2018年4号 [2018年1月23日発売] [雑誌]

そんな『金田一少年の事件簿』に限界を感じながらも惰性で読み続けていると、永遠の高校2年生だと思われていた金田一少年が大人になるという発表がされた。ただ大人といってもどのラインの大人が来るかは分からない。発表初期は「どうせ大人といっても大学2年生(20歳)という設定で、要領よく大学受験をこなして美雪と同じ大学に進学している設定なのだろう」と思っていたら「37歳」という想定外の年齢が発表されてかなり驚いた。一体金田一と美雪はどういう関係になっているのか、金田一はどういう仕事をしているのか、様々な疑問を胸に連載を読み始めた。

 

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<出典:天樹征丸・さとうふみや/講談社>

まず驚いたのが37歳の設定でも17歳の時と殆どビジュアルが変わっていなかったこと。そして金田一の職業はお得意の推理を生かした仕事とかでもなく、「音羽ブラックPR社」という社名からブラック企業の匂いがプンプンしながらも意外とマトモな仕事に就きながら普通に働いていたことだ。また気になる美雪との関係はボカされているので全容は掴めない。ただし現在もLINEでやり取りをしているようだし、目覚ましのアラームを美雪の声に設定しているなど関係は続いている様子。結婚や交際などについては不明だが、37歳という設定でお互いの気持ちを素直に明かすことができずに高校から20年以上「友達以上恋人未満」の関係を続けているとは考え難いので、何らかの進展はあったはずだ。

 

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<出典:天樹征丸・さとうふみや/講談社>

美雪との関係はさておき、『金田一37歳の事件簿』の舞台は『金田一少年の事件簿』の記念すべき最初の事件の舞台でもあり、その後も含めて計3回金田一が訪れ「悲劇的な連続殺人事件」が起こり謎を解いてきた因縁の場所、オペラ座館があった島が舞台となる。金田一は「大丈夫 三度にわたって殺人事件の起きたあの呪われた館はもうないんだ 何も起こりゃしないさ…!」と自分を言い聞かせるが、当然「事件簿」とタイトルについている以上事件が起こらないわけがない。

 

 

<注意>以下『歌島リゾート殺人事件』のネタバレ

 

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<出典:天樹征丸・さとうふみや/講談社>

『37歳の事件簿』の金田一は何故か「もう謎は解きたくないんだぁ」とこの20年で何かがあったことを匂わせながら物語が進むが、勿論殺人事件が起きてしまえば、「ジッちゃんの名にかけて」「謎はすべて解けた」を37歳版用に少しアレンジをしたセリフを決めながら、謎を解いてしまうのが金田一。ただ少年誌版と青年誌版で異なるのは事件の謎を明かすシーンで犯人以外きてくれないことと、犯人の殺人に至った動機で特に後者は青年誌に移籍したからこその展開になっている。そもそも『金田一少年の事件簿』の犯行の動機が毎回悲劇的な復讐譚となっていたのは、少年誌で人を殺すのだから「それ相応の理由」がなくてはならないという作り手側の配慮だった。そうなる殺人の動機が「ハンガー」や「タップダンス」の『名探偵コナン』は「少年誌としてどうなのか?」という疑問も浮上するが、『金田一少年の事件簿』は「殺人に至るまでの動機」を物凄く大切にしてきた。

ただ『37歳の事件簿』は少年誌の『週刊少年マガジン』から青年誌の『イブニング』へ移籍しているから、配慮する理由がなくなった。そのためか犯人の動機は「ただジャマだから殺した」というヒドイ理由。しかもトリックもその場その場の「思いつき」で実行した杜撰なモノだったことが判明する。個人的にこの展開はかなり好きな上に「青年誌に移籍した意味」も見出せるのでかなり気に入っている。

 

 

昔読んでいたけど暫く離れていたという人は、この機会に読んでみると面白いかもしれない。 

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金田一37歳の事件簿(1) (イブニングコミックス)

金田一37歳の事件簿(1) (イブニングコミックス)

 

 

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