「触れたら最後、日本全土がハルマゲドン」な映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』への擁護と批判

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<注意> 映画『ドラクエ』のネタバレ

山崎貴監督最新作『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の賛否が割れている。

 

  • カオス状態の賛否両論映画

自分は公開2日目に書いたエントリー通り「色々と言いたいことあるが…」と感じながらもオチ含めて基本的に肯定派。当然否定派の意見も理解できる部分はあるが、何故かウイルスの「大人になれ」という発言を「映画のメッセージ」と拡大解釈して騒いでる人が多くて「頭が痛いな」というのが正直な感想。また新海誠監督に対して「作品だけで監督の人格否定までするのはおかしい!」というマトモな意見を持ってる人が「作品だけで山崎貴監督の人格否定」をしていたり、実写版『デビルマン』を比較対象に出して「絶対どっちの作品も見ていないか、観ていたら自分から頭が悪いとアピールするツイート」をする人が続出したり、「エンドクレジットに鳥山明の名前がないのが全て物語っている」とか「山田孝之が本作に対するコメントを出していない」などデマも広がるカオス状態。

更に製作スタッフ側も映画に込められたメッセージを無視するような火に油を注ぐツイートをするなど目も当てられないの状況。興行面でも最終興行15〜20億円程度が見込みと全国公開の夏休み東宝アニメ映画としてはイマイチな数字。マイナス面ばかり目立つ映画『ドラクエ』だが、このエントリーでは「映画のメッセージ」は肯定した否定意見を書きたい。

 

 

  • 「あなたが主人公」を守った映画

ドラゴンクエスト ? 天空の花嫁

自分がこの映画を擁護したい理由は「『ドラクエ』が「あなたの冒険」であるという前提条件を守っている」事と「劇場にいる観客が同時にそれぞれの『ドラクエ』との思い出を振り返るイベント性がある」事からだ。

1つ目の擁護理由は公開前に予告編を観た自分は「『ドラクエ』の主人公が感情豊かにベラベラ喋るのはやっぱり違和感があるな…」とネガティブなイメージを持っていたので、「実は主人公は『ドラクエ』の1プレーヤーでしかなかった」「ゲームの世界は作り物でしかないけど、あなたが仲間とした冒険は本物」という結末は「『ドラクエ』の主人公はあなたです。」という前提条件を再確認できる意味で素晴らしいと思った。またこの設定にしたことで花嫁問題も「あなたの選択が本物」とどのファンにも角が立たない作りになっている。

2つ目の擁護理由は劇場という数十人から数百人が集まる空間で、それぞれがそれぞれの『ドラクエ』の思い出を同時に振り返る体験をさせることを試みた作りは面白いと思ったからだ。現に自分は『ドラクエV』との思い出を振り返って懐かしい気分に浸れたし、周りの人は「どんな思い出があるのかな?その人の奥に眠る『ドラクエV』との思い出にリンクさせて感動させるなんて凄い映画だな」と胸が高まった。劇場が明るくなると自分の前に座ってたスキンヘッドのおじさんは全く腑に落ちてなさそうだったし、後ろに座ってた途中まで声を上げて楽しんでる様子だった子供はラスボス戦では静かになってたけどね…

 

 

  • 「本当に愛があるのか?」という演出の数々

映画 ドラゴンクエストユア・ストーリー パンフレット

自分は本作に肯定的ではあるが、否定意見の中で「あの結末に持ってくにしては、それまでの描写に『ドラクエV』への愛が足りない」という指摘はもっともだと感じた。やはりあの結末を提示するには、それまでの描写に細心の注意を払い「『ドラクエV』ファン」を納得させるべく丁寧な演出を心掛けなくてはいけなかった。当然ゲームと映画という媒体の違いからある程度「やむなし」という妥協ラインこそあれど、「冒頭の幼少期のダイジェストをスーファミ風ではなくファミコン風で演出する」とか「別のナンバリングタイトルの音楽を使っちゃう」とかこのエントリーのタイトル並みに雑な演出の数々に「本当に製作陣には愛があるのか?」という疑問を感じざるを得ないシーンは多かった。

また多くの人が指摘するようにラストで主人公がウイルスに対してアンチウイルスを放つシーンの剣が「ロトの剣」であるのも「『ドラクエ』ファンへの見当違いの目配せ感」があるゲンナリポイントだ。映画の伝えるメッセージが「ゲームは作り物かもしれないけど、あのプレーした時間は本物の冒険だったんだ!」というなら、やはり「自分がパパスの子供である」ということを胸に「パパスの剣」で倒すのがベストだっただろう。これでは映画の制作陣こそが「この物語を信じていないのでは?」という疑惑を向けたくなる。

その上「『ドラクエV』が好きな主人公が少年時代編をスキップしたのがおかしい!」という否定意見にも同意する。ゲームと映画の媒体が違う以上、ダイジェストになるのは仕方ないにしても「最初のファミコン風ダイジェスト」は主人公の夢を使った回想にしてもいいし、いくらでもやり方があったはずだ。

何より山崎貴総監督のインタビューを読むと「『ドラクエ』とは何か?」というテーマに真剣に立ち向かった結果、この脚本になったというよりは「ゲームの映画化とかオファーされても絶対上手くいかないし断りたいな… でも先方は引かないし… あっ!そうだ! 『レゴムービー』みたいにしたらゲームの副読本みたいにならず一本の映画として成り立つんじゃん!」みたいな成り行きが見え隠れする部分にもファンと監督の映画に対する距離感が生まれてしまったのではないかと思った。

 

 

  • それでも『ユア・ストーリー』を肯定したい理由

個人的には本作は「『大人になれ』と問題定義した割には主人公の答えが中途半端だな…」とか「どうせVRオチにするならゲームの経験が現実世界に還元される描写もあれば、よりメッセージ性も強くなったのにな…」とか色々不満点がある反面、「でも劇場で自分の『ドラクエV』との思い出を振り返って感動した、あの体験は本物だしな…」とか色々考えた末に思い出したのが今年元次官に殺害された英一郎さんの『ドラクエ』絡みのエピソード。詳しくは上に貼った『NEWSポストセブン』の記事を読んで欲しいけど、表面上だけ見れば実家に寄生して引きこもる無職で、両親に暴力を振るうダメな人だったのかもしれない。だけどゲームで知り合った女性が落ち込んでる時には「自分はリアルダウン(自殺)も考えたんだけど、ゲームを通して大切な人を見つけることができた。だから大丈夫だよ」みたいな励ましの言葉を送ったりする優しい一面を見せたこともあったみたいで… やっぱりこういうエピソードがあると、本当にそれぞれの『ユア・ストーリー』があってそこを描こうとした狙い自体が間違ってたとはどうしても思えない。

 

  • 最後に…

この作品を嫌いな人や否定する人の気持ちも凄く理解出来る。ただ普通にラスボス戦を描いてても「それなりに楽しい映画」にはなったはずなのに「触れれば最後、日本全土がハルマゲドン」な映画にしたというのは良くも悪くも最高の映画体験を提供してくれる映画だと感じた。一方で製作陣の想いとは裏腹にそれぞれの『ユア・ストーリー』が語られ合わずヘイトばかり生み出してるのは残念だ。ただ1番恐ろしいのは山崎貴監督が「賛否両論になると思う」というスタンスではなく、「『ドラクエ』ファンが感動してくれること間違いなし!」というスタンスで製作して宣伝して公開したという事実だ。

 

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