空知英秋の人気マンガ『銀魂』が15年の歴史に幕/最終回ネタバレ

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<注意> 『銀魂』最終回のネタバレあり

空知英秋の人気マンガ『銀魂』が15年の歴史に幕を下ろした。

 

  • 編集部からの期待値が低かった新連載

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『銀魂』は2003年から『週刊少年ジャンプ』で連載を開始。原作者の空知英秋は新連載開始前に編集長から「君はまだ若いから次があるよ」と声をかけられるほどジャンプ編集部の本作への期待度は低かったという。実際連載当初本作の人気アンケートは振るわず打ち切り候補にも上がっていたという。しかしその後ジワジワと人気を伸ばしていき、初版3万部だったコミックス第1巻も発売直後に完売して緊急重版がかけられた。編集部からの期待値が低かった新連載はそれからテレビアニメ化・実写映画化とメディアミックスにも成功して、コミックス全77巻の累計発行部数は5500万部を超えて『週刊少年ジャンプ』を代表する大ヒット作品まで登り詰めた。

 

  • 「完結出来るのか!?」は鉄板ネタ

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長期連載となった『銀魂』だったが、ファンの中の最大の不安は「果たしてちゃんと完結出来るのか?」という点だった。その不安は空知先生も同様に持っていたらしく、劇中では「本当に完結出来るの?」とネタにしていた。ただそのネタに心の底から笑えたのはやはり「それでも空知先生ならシッカリとまとめてくれる」という信頼があったからだと思う。『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博先生がネタにしたら多分心の底からは笑えない。

 

 

  • 高杉の左目に最後に映ったのは…

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「このままギャグとシリアスを交互に繰り返して続けて、永遠に『銀魂』は終わらないんじゃないか…」 そんなことを考えたこともあったが、やはり始まりがあるものには全て終わりがある。「『銀魂』が終わりに向かっているのでは…」 そう感じさせた最初のエピソードは将軍の暗殺だった。ただここで暗殺された将軍は本物の将軍ではなく替え玉だったのだが、その後銀さんとの長年のライバルである高杉との決戦が始まり、過去編が始まったので「あー、これは本当に終わり向かっているのだな」と確信させられた。

過去編では何故銀時が師匠である吉田松陽を自らの手で首を刎ねたのかが語られる。その理由は銀時は「松陽の命」と「高杉と桂の命」を天秤にかけられ、高杉達の命を救うため松陽を自ら手にかけたのだった。高杉は松陽を殺した銀時に怒り、詰め寄ろうとした時に左目を失う。そしてその時高杉の斬られた見えなくなった左目に最後に映ったのは銀時の横顔だった。

高杉は「松陽の命を救いたい」と願い、その願いは「銀時が1番強かった」ことを知っていた。だからこそ高杉は「何故自分たちの命を救った」のか銀時に問う。その問いに銀時は「お前が俺でもそうしたさ」と答え、「だからお前は己ではなくもう一人の己に刃をつき立てるんだろう」と説く。そして銀時は「高杉達の命を救った」のではなく、「松陽の大切にしてるものを守りたかった」のだと主張した。銀時は今でも「松下村塾の高杉晋助の魂」を護ろうとしていたのだ。

 

  • 将軍暗殺

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将軍が暗殺される回は余りに衝撃だった。この回は「暗殺されたと思われていた将軍は実は替え玉だったことが明かされ、茂々は最後の将軍として国を護るために京で新政権を樹立することを宣言する」という物凄く前向きな物語が描かれていた。それだけに将軍暗殺は替え玉エピソードを既に消化していた分、「本当に死んでしまったのだ」という残酷な現実と空知先生の「『銀魂』を本当に完結させる」という覚悟が伝わってきた気がした。

 

  • 将軍暗殺後の「絶望」と「希望」

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将軍暗殺後の『銀魂』は喜々が新将軍になり、茂々の暗殺を阻止できなかった責務により近藤と松平片栗虎に死罪が言い渡され、真選組は解散が決定。新将軍は前将軍と異なり、自分に少しでも逆らう人間は迷わず殺し民衆に力を誇示する。ここで描かれる「銀さんのいつも以上に死んだ目」「近藤さんの死罪にどう行動していいか分からず戸惑う土方と沖田」「喜々に逆らって首筋に刃物を突きつけられる妙」など各キャラクター達の普段とは違う姿を見て「もうあの日常は戻ってこないんだ…」という絶望感が凄かった。だからこそ銀時の「夜明け前が1番暗ェ だが目をつぶるなよ 闇から目ェそらした奴には 明日に射す光も見えねェ」に対して、桂が「夜明けに会おう」と登場した時は物凄い希望を感じることが出来たのだ。

 

 

  • 虚の正体

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最終章では被り笠と黒い仮面をした虚という敵キャラが登場。虚は神楽や沖田の戦闘力を大きく上回る強さを見せる。ただ銀時は戦闘中に初めて刀を交わしたはずの虚の太刀筋に覚えがあるように感じる。そして虚の仮面が壊れると、そこには銀時達の師匠である吉田松陽の顔があった。実は吉田松陽の姿をした虚の正体は「アルタナ」の巨大エネルギーの力で不死になった人間であり、銀時の師である吉田松陽と虚として姿を現した吉田松陽は肉体的に同一人物だったのだ。そして彼は不死身故の苦しみから無数の人格を作り続け、その中の虚に抗うことを選んだのが吉田松陽だったということが明かされる。そして吉田松陽を殺したのは銀時ではなく虚だったのだ。

 

  • シリアス中に実写映画化ネタ

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シリアスなシーンが続く中、「やっぱり『銀魂』のこと好きだな〜」と改めて感じたのは実写映画化をネタにしたこと。通常モードの『銀魂』ならともかくシリアス、それも最終章だと流石にネタにするのはキツイかと諦めていたので、やっぱりこういう部分をシッカリと読者の期待に応える部分は流石だなと感じた。

 

  • 登場人物一人一人に見せ場を作る優しさ

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『銀魂』の最終章は2014年から2019年まで5年以上かけて描いている。つまり連載期間の1/3を最終章に割いているわけだが、その理由は今までは少なかった見開きページでのアクションシーンが増えたということに加えて、歴代の登場人物一人一人に出来るだけ見せ場を作ろうとした空知先生の優しさの結果なのだろう。

それでいて物語は突如2年後まで時間が飛ぶ大胆さを見せるので驚かされる。しかしこの2年も意味なく飛ぶ訳ではなく、この間に高杉が「アルタナ」を取り込み不老不死化したことが明かされる。そして虚が高杉の中に入り込み再び不死身化することを狙っていたことも判明する。つまり最終決戦は「銀時vs高杉の肉体を持つ虚」となり、銀さんが虚を倒すには高杉も犠牲にしなければいけない状況に立たされる。そこで虚は問う。「友のために師を斬り、師のために友を斬り、君に何が残る」「そこには空っぽの虚があるだけだ」と… ただ銀さんは「俺は空っぽになんてならねェよ 俺の護りたかったもんは魂(ここ)にある」と虚を倒す。そして高杉を看取る時の銀さんは彼の左目に焼き残してしまった涙の横顔ではなく、高杉が常に求めた男の表情とセリフで送り出してあげようとする。それを右目で確認して安心そうに眠る高杉を見て、堪えていた涙が彼の頬に落ちる。このシーンは過剰演出にならず、銀さんの頭の動きや背中から悲しみが伝わってくるから泣けるのだ。

そして永遠の命を持て余していた吉田松陽が最期時間に追われながら自分の体内にあるアルタナを起爆剤にして弟子たちを救おうとするラストも良かった。彼は最期、自分が銀時たちと出会えたことで「吉田松陽になれた」と感謝すると同時に、銀さんも色々な人と出会ったことで「坂田銀時」になれたのだと理解する。そして銀さんは師匠に自分が新八と神楽と万事屋をやっている姿を見せたかったと伝える。松陽が初めて銀さんと出会った時、彼は一人だった。でも今はそうじゃない。そしてそれを銀さんは師に見せ、師はそれを見て安心してあの世に行く。これ以上にない素晴らしい着地点だと感じた。

 

 

  • 最終回は日常へ

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最終回は戦闘中に故障し長い間眠っていたたまに対して、何があったのかをナレーション形式で語るスタイルを取っている。そのナレーション内では江戸が東京になったことなどが語られる反面、『銀魂』らしく各キャラクターがナレーションを横取りして自分の都合の良いエピソードを説明して「最終回を偽装する」というギャグが展開される。そしてオタとして、このナレーションはマダオが「みんな無職になればいい」と願いを取り入れたり「誤った世界」を説明するデータだったことが明かされる。最後に登場する銀さんはたまに多くは語らない。しかし1つ確実いえるのは、銀さん・新八・神楽が揃った万事屋が暴れる江戸の街・歌舞伎町の日常が戻ったということだった。

 

出典:『銀魂』/空知英秋/集英社

 

  • 最後に…

最終回へのカウントダウンまでして貰っといて『週刊少年ジャンプ』の連載中に完結できなかったりと最後まで色々やらかしまくった作品でしたが、だからこそ自分は「『銀魂』を読んでいて良かった」と心の底から思える作品になったのではないかと思います。15年間お疲れ様でした。空知先生の次回作も期待しています!

 

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銀魂―ぎんたま― 77 (ジャンプコミックス)

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