『SPEC』『トリック』完結から6年… 2作品完結以降の堤幸彦監督作品を興行収入と視聴率で振り返る!

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今回は『SPEC』『トリック』完結から6年経ったので、2作品完結以降の堤幸彦監督のテレビドラマと映画について興行収入と視聴率をベースにまとめます。舞台やアイドルについては疎いのでノータッチです。

 

長寿シリーズ完結が続いた2013年と2014年

映画「劇場版 SPEC?結(クローズ)? 漸(ゼン) ノ篇」【TBSオンデマンド】

トリック劇場版 ラストステージ

堤幸彦監督は1995年に『金田一少年の事件簿』で世間的にブレイクを果たし、その後『ケイゾク』『池袋ウエストゲートパーク』『トリック』と数々のヒット作品を生み出し40代はファン層を広げていくことに成功する。50代になると『明日の記憶』など社会派ドラマや『20世紀少年』『BECK』など人気漫画の実写映画など幅広いジャンルで活躍をみせてヒットメーカーとしての地位を確立する。

そして今から6年前の2013年11月に『ケイゾク』から連なる『SPEC』シリーズの完結編『劇場版 SPEC〜結〜 漸ノ篇/爻ノ篇』を公開して2部作合計で興行収入48.1億円(前編:27.5億円・後編:20.6億円)の大ヒットを記録し有終の美を飾る。更にそれから2ヶ月後の2014年1月に14年半続いた人気シリーズ『トリック』の完結編『トリック劇場版 ラストステージ』を公開して興行収入18.0億円のヒットを叩き出し、同時期にテレビ放送された『TRICK 新作スペシャル3』も平均視聴率15.1%と高視聴率をマークして此方も有終の美を飾る事に成功した。

ただ近年の興行不振や視聴率低迷から人気シリーズの完結編は約20年貯めてきた堤幸彦監督の貯金を使い果たした結果のようにも思える。

 

イマイチな結果だった2015年

第壱話 堤幸彦最新シリーズ喪服の女警官とマル暴刑事人情任侠事件簿

『SPEC』『トリック』完結後の堤作品を振り返ると2014年に『エイトレンジャー2』(興行収入:7.4億円)、2015年に『悼む人』(興行収入:3.0億円)を公開しているが、2作品完結後初の大型作品でいえば『ケイゾク』『SPEC』シリーズの植田博樹プロデューサーと再タッグを組んだ『ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜』が挙げられるだろう。

本作は過去の堤作品で定番の男女一対のバディもの刑事ドラマであり、「タイトルが『◯◯◯ク』になる堤作品は面白い」という法則、更に大島優子のノースタントアクションなど話題を呼んだが平均視聴率は6.5%と惨敗だった。低視聴率の最大原因は劇中でもネタにされていた裏番組である木村拓哉主演『アイムホーム』が平均視聴率14.8%の高視聴率を記録していた事が挙げられている。しかも『アイムホーム』は初回視聴率16.7%を記録した後、13-14%台で推移して最終回で19.0%まで数字を伸ばしているのに対して『ヤメゴク』は初回視聴率9.1%を記録した後、5-6%台を推移してそのまま最終回まで数字を上げれなかった。個人的には両者共話数を重ねる毎に加速度的に面白くなっていくタイプの作品であると感じたが、『アイムホーム』は初回から「仮面の謎」という分かりやすい設定かつ最終回への引っ張り方も上手かった。また2作品共主演のパブリックイメージを壊すという意味での共通項もあったが、その点でも『アイムホーム』のが一枚上手だったように感じた。兎にも角にも堤監督の『SPEC』『トリック』完結後初の連続ドラマは不発に終わってしまう。

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悼む人

イニシエーション・ラブ

映画作品の方で言えば2015年は前述した『悼む人』に加えて、『イニシエーション・ラブ』『天空の蜂』の3本を公開している。『イニシエーション・ラブ』は「最後の5分全てが覆る。あなたは必ず2回観る。」というキャッチコピーのもと、実写映画化不可能と言われていた同名小説を「大河ドラマの子役が急に人気俳優に成長しても苦笑いしながら受け入れてしまう」人間の心理に基づく映像トリックで実写映画化。興行収入は13.2億円とヒットを記録したが、この後堤幸彦「冬の時代」が到来する。

悼む人

悼む人

 
イニシエーション・ラブ

イニシエーション・ラブ

 

天空の蜂

まず前述した通り2015年は『天空の蜂』も公開しているが、本作は原発テロ事件を題材にした東野圭吾原作の同名小説を実写映画化した意欲作で堤監督が数々のインタビューで「棺桶に入れたい作品」「『天空の蜂』を端緒に、映画人の仲間入りができるなら嬉しい」「記念碑になってくれるかもしれない作品」と「2012年公開の『MY HOUSE』の時も似たような事言ってなかったっけ?」というツッコミをしながらも本作に対してかなりの自信を見せていた。大学時代に学生運動に取り組んでいた事からの自負もあったのかもしれない。

ただ本作は堤監督の想いとは裏腹に本木雅弘の演技が同年公開の『日本のいちばん長い日』と合わせて評価される面はあっても、作品自体が「日本アカデミー賞」や「キネマ旬報」など堤監督が本作のインタビューなどで言うところの権威あるメディアでに評価される事はなかった。また本作は一部報道によると総製作費は10億円と言われているが、その審議を差し置いても巨大ヘリのセットを作った事やVFX作業(CGカット数は約1000カットで作業期間は1年と日本映画としてはトップレベル)を考えればそれなりの金額は注ぎ込まれていると考えられる。その製作費を考慮すれば興行収入10.8億円はかなり物足りない数字だっただろう。これらの結果から堤監督の2015年は全体的にボチボチといった感じだが、2016年は厳しい結果が待ち受ける。

天空の蜂

天空の蜂

 

 

www.creators-station.jp

 

 

堤イズムがウケなかった2016年

第一話 螢の秘湯に怪死体!!絶対舌感が完全犯罪のトリックを打ち砕く

2016年はTBSテレビの7月クールで植田博樹プロデューサーとタッグを組み堤監督が20年以上構想を練った念願の企画を還暦祝いとして連続ドラマ化した『神の舌を持つ男』が放送された。前評判は「向井理・木村文乃・佐藤二朗の3人が堤幸彦の演出により化学反応を起こすのでは!?」と期待が高く個人的にも楽しみにしていた。しかし第1話の放送は年に1回くらいある「コレは面白いのか?」という何故か視聴者の方が不安になってくるタイプの作品だった。

第1話の視聴率は6.4%と裏番組の『金曜ロードshow!』で興行収入65.4億円の大ヒットを記録したアンジェリーナ・ジョリー主演『マレフィセント』が地上波初放送で13.9%の高視聴率を記録していた事を含めても惨敗といっていい数字だった。世評も「向井理が舌を出すのが気持ち悪い」と本作最大のアイデンティティを否定する声や「『トリック』が好きな映像系の学生が撮ったような作品」「ドラマではなくお金をかけて豪華俳優を集めたコント番組」「そもそもミステリーとして面白くない」など厳しい声が多かった。その後向井理の舌を出すシーンにモザイク処理をするなど対策を講じたが視聴率は伸び悩み第6話では最低視聴率3.8%を記録する。しかし映画化がドラマ放送前から決まっていた事で放送前から全話撮影済みと放送を打ち切る事も出来ず最終的に平均視聴率5.6%の大惨敗に終わる。個人的に残念だったのは本作が攻めた実験作による失敗ではなく、ある意味数字が見込める定番の堤演出を施した守りに入った作品で失敗した事だ。また『トリック』のシリアスな世界観に小ネタを入れるのと、元からコメディタッチの緩い世界観に小ネタを入れるのでは全然意味合いが違うという事を『スシ王子』の失敗から学べていなかったのもキツく感じた。

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真田十勇士

また2016年はテレビドラマだけでなく松竹から公開された映画作品も不発だった。まず堤監督が2014年に演出した舞台の劇場版で「日本映画"最後の”超大作」という心の底からツッコミたくなるキャッチコピーを付けた『真田十勇士』は総製作費15億円、興行目標30億円に対して最終興行6.08億円と製作費を回収出来ない程の大コケで、期待されていた続編も製作されなかった。

内容面では戦闘描写で一定の評価を得るものの舞台では第1部に相当する冒頭のアニメ演出や中盤での重要キャラクターがスロモーションを使ってゆっくりと死んでいくシーン、エンドクレジットでのテレビっぽさ全開の演出など酷評も目立った。ただ2016年の大河ドラマ『真田丸』の便乗企画という批判も多かったが、この件に対しては一応『真田丸』は『真田十勇士』のセットを流用している事から相互便乗であるという事は示しておく。

真田十勇士

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RANMARU 神の舌を持つ男

テレビドラマ『神の舌を持つ男』がコケ、超大作映画『真田十勇士』がコケた堤幸彦監督作品の2016年のラストを飾るのが12月公開の松竹のお正月映画にして年を越せなかった映画『RANMARU 神の舌を持つ男 酒蔵若旦那怪死事件の影に潜むテキサス男とボヘミアン女将、そして美人村医者を追い詰める謎のかごめかごめ老婆軍団と三賢者の村の呪いに2サスマニアwithミヤケンとゴッドタン、ベロンチョアドベンチャー!略して…蘭丸は二度死ぬ。鬼灯デスロード編』だ。

本作は前述したテレビドラマ『神の舌を持つ男』の劇場版だが、公開前からTBSテレビが連ドラの低視聴率からヒットは見込めないと本編撮影開始後に製作委員会から降りたり、堤監督が低視聴率に対しての詫び状を関係者に書いたりと公開前から悪い意味で話題が尽きない作品だった。興行収入は1.0億円と松竹の「コアなファンが付いてるのでは!?」という望みから見込んだ12億円を大きく下回り当初予算の10分の1の結果に終わった。

個人的に何故本作を映画化したかを推測してみたところ堤監督の「『SPEC』『トリック』と長寿シリーズが立て続けに終わったし、今度は毎年お正月に家族みんなで観れるような『男はつらいよ』みたいなホッコリした映画を作りたい」という思惑と松竹の「お正月映画の定番として新たな『男はつらいよ』のような長寿シリーズが欲しい!」という思惑が一致したからだと考えられる。恐らく「向井理が全国各地の温泉を回る設定なら地方とのタイアップも出来るしネタにも困らない!しかも温泉地で毎回美女と出会って恋に落ちるけど結局実らない展開は『男はつらいよ』とそっくりだ!『トリック』シリーズをヒットさせた堤監督なら間違いなしでしょ!」というノリで… しかも堤監督は前述した『スシ王子』、TBSテレビと松竹は香取慎吾主演の『こち亀』でも同じ失敗をしている。ただ大コケをネタに出来る堤監督の姿勢は好感度が高かった。ちなみに2016年は『シン・ゴジラ』『君の名は。』が大ヒットした事から堤映画に古臭さを感じたというレビューも目立った。

 

www.dailyshincho.jp

www.bunkatsushin.com

 

 

映画公開が1本もなかった2017年

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大惨敗に終わった2016年だったが、2017年は日本テレビで1月クールにスペシャルドラマが13.5%の高視聴率を記録した『視覚探偵 日暮旅人』を連続ドラマ化した作品を放送。「舌の次は目か!」とも思ったが、初回視聴率は11.2%と二桁スタートを切り平均視聴率は9.2%と踏ん張り「冬の時代」に暖かい光が差し込んだようにも感じた。ただし2000年以降から途切れる事がなかった映画作品の公開がなかったり(これはスケジュールの都合偶々そうなっただけだと思うが…)、同列に語られる事が多い三池崇史監督作品や弟子である大根仁監督作品の不発も続き、毛色は違うが深夜ドラマ初の福田雄一監督の『銀魂』での大ヒット(佐藤二朗も木南晴夏も堤組というよりは福田組のイメージが強い)、新人時代に共に人気バラエティを作ったとんねるずの長寿番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』の放送打ち切りなど平成の終わりと共に時代の変わり目を感じずにはいられない年でもあった。

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新たなる続編を展開した2018年

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『ヤメゴク』『神の舌を持つ男』とTBSテレビで放送した連ドラは2作連続コケ、『天空の蜂』『真田十勇士』『RANMARU 神の舌を持つ男』と松竹から公開した映画も3本連続でコケ「堤幸彦監督作品がウケる時代も終わったんだな…」と悟り始めた2018年の堤幸彦監督作品は再び植田博樹プロデューサーと組んだ『ケイゾク』『SPEC』に続く『SPECサーガ完結編』である『SICK’S』だった。『SPEC』を完結して5年で再び『SPEC』(『ケイゾク』)シリーズに戻ってきたのだ。本作は「視聴率が取れないから地上波では企画が通らない!」からなのかは不明だが、インターネットテレビドラマParaviで配信された。

規制が厳しい地上波ではなく規制の緩いネットでやる事や神秘的な音楽と共に『ケイゾク』のアナログな雰囲気と『SPEC』のデジタルな雰囲気の2つを持ち合わせる予告編などから配信前は期待を煽ったが、配信スタイルの不便さやCG全開のオープニングなどにYouTubeのコメント欄には酷評が相次いた。また全体を通してみても『ケイゾク』の雰囲気で『SPEC』の縮小再生版をやっているような感じで、地上波からネット配信に変えた意味(規制面)での恩恵を特別感じる事も出来なかった。

※地上波放送ではモザイクが… 一応ネット配信の恩得か?

ただ擁護意見を書くと現段階では3部作(更にシリーズが続く可能性アリ)の第1部と物語の序章であり、まだ世界観やキャラクターの魅力が視聴者に馴染んでいない為、この先世界観やキャラクターが馴染むに連れて『ケイゾク』『SPEC』同様に加速度的に面白さ増していく可能性も秘めている様にも感じる。

youtu.be

本作はParaviの公式YouTubeチャンネルで冒頭が公開されているので、リンクを貼っておきます。

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また2018年は約2年ぶりに映画『人魚の眠る家』が公開された。本作は『天空の蜂』に続き東野圭吾原作作品を実写映画化した作品で、堤監督はインタビューで「第2のデビュー作」と語り、「代表作になる予感がする」と自信を見せていた。『天空の蜂』の時も似たようなことを言っていた気もするが、本作は「堤監督らしくない」「こういう映画も撮れるんだ」と高評価を得て興行収入も10億円を超えるヒットとなった。

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復活を期待させる2019年

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『人魚の眠る家』に続き2019年1月に公開した『十二人の死にたい子どもたち』は大御所俳優なしで杉咲花や橋本環奈など若手俳優を集めた作品で、若者層から支持を集めて興行収入15億円を超え久々に胸を張って大ヒットと言える作品となった。堤監督としても「遺作その1」と自信を見せていた。

そして2019年は『SICK’S』の第2部『覇乃抄』が配信される。堤監督は本作に関しても「集大成を超えた集大成。ものすごいグルーヴ」と自信を覗かせている。果たしてその出来は… 

 

natalie.mu

 

 

最後に…

堤監督の各作品毎のコメント見ると「第2のデビュー作」「棺桶に入れたい1本」「代表作になる予感」「死ぬ前に思い出す作品の1つ」みたいな事をボジョレー・ヌーヴォーの品質並みに多用している。後10年は監督業を続けるみたいなのでこれからも応援してます!

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