圧倒的なビジュアルでCGアニメならではを詰め込んだアクション映画『インクレディブル・ファミリー』

f:id:junk-weed:20180719104057j:image

今回はディズニー・ピクサー最新作「インクレディブル・ファミリー」の感想を語ります!

 

観る前の期待度

自分は「リメンバー・ミー」の時も書いたかもしれませんがピクサー作品には絶対の信頼を置いている人間です。しかしブラッド・バード監督作品はピクサー作品の中でも極めて作家性が色濃く出ている作品だと思います。今回はまずブラッド・バード監督のフィルモグラフィーを見ていきたいと思います。

 

  • アイアン・ジャイアント

アイアン・ジャイアント(吹替版)

彼が世間から注目を浴びたのは初監督映画作品の「アイアン・ジャイアント」で、未だに本作がブラッド・バード監督作品の中で一番好きだと答える人も多い作品です。本作のメッセージは劇中でも繰り返し使われる「なりたい自分になれば良いんだよ」という非常にありがたいモノ。ブラッド・バード監督は本作で評論家からの絶賛と観客から絶大な支持を受けました。しかし興行的には大失敗に終わります。ブラッド・バード監督はこの段階では本当の意味での「なりたい自分」からは少し遠かったと考えられます。

 

  • Mr.インクレディブル

Mr.インクレディブル (吹替版)

そんなブラッド・バード監督を「なりたい自分」になれたのは2作目の「Mr.インクレディブル」の成功からでしょう。本作はワーナー・ブラザースのアニメーション部門凍結により途方に暮れていたバードを旧友ジョン・ラセターがピクサーに誘った事から製作された作品だ。つまり彼はドン底から這い上がった記念碑的作品でもある。本作は第77回アカデミー長編アニメ賞を受賞し、アニー賞では全10部門制覇を成し遂げるなど高い評価を受け興行的にも6.33億ドルの大ヒットを記録した。

f:id:junk-weed:20180802013045p:image

しかし本作の物語に異議をとなる者も少なからずいた。それは悪役の扱いだ。本作の悪役は主人公のようなヒーローに憧れたが「なりたい自分」になれなかった男が闇落ちして主人公たちに立ち向かうというモノだ。ネタバレになるのでココで直接的なオチは書かないが「なりたい自分になれば良い」というメッセージからは真反対のラストのように思える。ただ自分はこの点は少しの違和感を覚えながらも「偶にはこういうオチも良いよね。」程度で流していた。しかし次回作で彼の作品のメッセージ性は更に残酷になっていく。

Mr.インクレディブル (吹替版)

Mr.インクレディブル (吹替版)

 
Mr.インクレディブル (字幕版)

Mr.インクレディブル (字幕版)

 

 

  • レミーのおいしいレストラン

レミーのおいしいレストラン (吹替版)

バード監督の3作目の「レミーのおいしいレストラン」も批評的・興行的に大成功を収めた作品だ。自分も凄く楽しく観た記憶がある。ただ本作は人間側の料理人は最後までネズミのレミーの操り人形でしかなく彼への「なりたい自分」のフォローは一切無い。せめてレミーに料理の助言をして料理が更に良くなるみたいな少しくらいのフォローがあっても良かったように思えるが…

 

  • トゥモローランド

トゥモローランド (字幕版)

ピクサーで監督した2作品を並べてみるとバード監督は才能がある奴は「なりたい自分」になれるが、才能のない奴はどうでも良いと本気で考えているように感じられてくる。そしてその傾向は5作目の「トゥモローランド」で極に達する。

f:id:junk-weed:20180801191723j:image

この物語はウォルト・ディズニーなどの世界中の天才達が作り出した選ばれし者しか行けない「トゥモローランド」を舞台に物語が進む。この世界のテクノロジーは現代科学を大きく凌駕しているが、普通の人々はこの世界の存在を知らない。そしてこの物語では最後まで普通の人々にはこの世界の秘密は明かされる事はなく、才能があると見込まれた子供達だけに「トゥモローランド」に行けるバッチが配られる。つまり「トゥモローランド」はその世界に選ばれた天才と見込まれたモノ同士が集まる選民思想の世界であり、普通の人達にその世界のテクノロジーを使わせようとする気は全くない。選ばれなかった人達の世界で地球温暖化が起ころうが何が起ころうが知ったこっちゃない。選ばれた自分達だけのテクノロジーが進歩したユートピアでヌクヌクと同じ思想の人達だけを集めて暮らせば良いのだから。さらにこの物語が悲しいのはその思想は金儲けが絡んでいるかどうかの違いだけで主人公達は悪役と全く同じ思想を持っているということだ。結局この作品でも選ばれた子供達は「なりたい自分」になれるけど、選ばれなかった子供達の事は知らないというバード監督の一貫したメッセージ性を浮き彫りにさせた。

f:id:junk-weed:20180801193133j:image

しかしバード監督がフィルモグラフィーの中で一番メッセージ性を色濃く出した作品は皮肉にも酷評された。これはメッセージ性の是非関係無く、映画後半の失速が半端なく純粋に面白くない作品だったからだ。さらに興行的にも製作費1.90億ドルに対して全米興行0.93億ドルの大惨敗で、世界興行も2.09億ドルと大コケした。才能ある選ばれし者だけが集う世界を描いた作品は多くの観客から選ばれなかったのだ。

トゥモローランド (字幕版)
 
トゥモローランド (吹替版)

トゥモローランド (吹替版)

 

 

  • ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル

ミッション:インポッシブル/ ゴースト・プロトコル (字幕版)

ここまでの流れだと自分がバード監督を嫌っているように捉える人も多いかもしれないがそんな事はない。どの作品も良い所はたくさんある作品だった。そして個人的にバード監督の中で一番好きなのは4作目の「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」だ。本作でバード監督は初めて実写映画のメガホンを取ったが、シリーズで一番弱いとされていた脚本をピクサー仕込みの手腕でブラッシュアップして物語に厚みを出すことに成功した。ブルジュ・ハリファのアクションシーンも上手くストーリーと融合させ、ラストの立体駐車場でのアクションシーンも「トイ・ストーリー2」の空港でのシーンを思い起こされるようなビジュアル的な楽しさを感じさせて凄く楽しかった。またトム・クルーズのスター性がしっかり発揮されら事で今までのバード監督作品と違い嫌味なく鑑賞する事が出来るエンタメ作品に仕上がっていた。

 

  • メッセージ性が強い作品は面白い

 

Mr.インクレディブル・ファミリー フィギュアセット


メッセージ性の好き嫌いがあったとしても自分は監督のメッセージ性が強い作品は良くも悪くも面白い作品だと思っています。なので個人的に「インクレディブル・ファミリー」らバード監督を「なりたい自分」にしてくれた思い入れのある作品の続編となれば期待出来ない訳がありません。また純粋な演出家としての力量は誰もが認める監督だとも思います。「トゥモローランド」だってレトロフューチャーなビジュアルは最高だったしワクワクさせられた!また「あの世界に選ばれる人間になりたい!」と思ってメチャクチャ頑張る人もいるだろうし… 作品からやる気を貰って実人生に還元するのは一番良い事だと思ってますしね。なので本作も色々な意味で期待しながら観てきました!

 

 

観た後のネタバレ感想

f:id:junk-weed:20181004174959j:image

評価:★★★★(5段階)

全米興行収入6億ドル超えで全米アニメ映画の記録を塗り替えた本作。その結果も納得出来る面白さでした。

 

  • アニメだからこその続編の始まり方

f:id:junk-weed:20181003161848j:image

今回の続編は前作の直後から始まりますが、コレはCGアニメだからこその特性を生かした続編の始まり方だなと思って素直に面白いなと感じました。また冒頭から前作から大幅に進化したCGで描かれるアクションシーンは最高でした。ちなみにあのお母さんのゴムは何処まで伸びれるものなのか?いつプチンと切れるか心配でしたよ。また氷を出すキャラの見せ方も良かったですね。ただ前作のあのハッピーエンドっぽい終わり方(恐らく公開当時はハッピーエンドだった)の後は実は結構残酷な現実が待ってたというのは少し悲しくなりましたね。

 

  • 大迫力のアクションシーン

f:id:junk-weed:20181003162114p:image

今年の夏はトム・クルーズ主演の『フォールアウト』のノースタントバイクチェイスが大迫力で「今更CGアニメでやられても…」みたいな事を正直感じてしまったんですね。ただ本作も負けず劣らずの迫力の上、CGアニメだからこそ出来るゴムを活かした方法でチェイスを繰り広げていてとても楽しかったです。

f:id:junk-weed:20181003162325p:image

また本作では夜のビルを華麗に飛ぶシーンはCGアニメを観てる事を忘れるくらい鮮やかで夜のビル群も少しレトロフューチャー感が漂っていてとても美しく酔いしれたくなりました。またビルとビルと間をヘリコプターがチェイスするシーンはエメリッヒ監督の『GODZILLA』を思い出しました。ヘリチェイスも『フォールアウト』にありましたが、本作では実際には撮影出来ないビル群でのヘリチェイスを見せているので、CGアニメの特性を最大限に活かしているように感じます。音楽の使い方も相まって作品の世界観に入り込めて本当に夢中になれる時間を過ごせました。他にも最後の船の中でのアクションシーンの全般やワープホールの使い方など見せ方が本当に上手いなと思いました。

f:id:junk-weed:20181003162900p:image

ちなみに日本で「ポケモンショック再来か!?」と恐れられていたシーンは、ある程度編集して公開してるそうですが編集後の映像でも確かにチカチカしてて眩しかったので致し方ない判断だったのかなと感じました。

 

  • スクリーンスレイヴァー

f:id:junk-weed:20181003153945p:image

今回の敵役はであるスクリーンスクレイヴァーは「スクリーンの前でヒーローにばかり助けを求めて、自分では何もしない奴らへ」みたいな事を訴えてくるんですがソレがこの映画を消費するだけで終わっている観客にも訴えかけてるようで少し居心地が悪かったですね。その時の映像は素晴らしかったんですが…

f:id:junk-weed:20181003215545p:image

ただ今回は『トゥモローランド』の時と違って「天才ではない普通の人達に自分たちでも頑張れ」というニュアンスだったので少しは自分も頑張ろうという気持ちにもなれた反面で、その悪役からの問題提起は後半投げっ放しのヒーロー大活躍で一般人大喜びみたいに終わってしまったのは少し残念でした。というより、一般人は掌返し過ぎの書き割りとして描かれていて少し嫌な気分に…

 

  • 悪役の正体

f:id:junk-weed:20181003215612p:image

今回自分は悪役の正体はお兄さんの方だと思ったら妹の方でビックリしましたね。『オーシャンズ8』で女と女の対決が観たいとか書いといて「妹はお兄さんの悪事を知らないで純粋に発明してる人なんだろうな」みたいな先入観で決めつけてしまって申し訳ないです。

前作がサクッと悪役を殺して終わりだったので本作もそうだったら嫌だなと思ったら続編ではちゃんと救ったのは良かったですね。初めは本当に死んじゃったのかと思いましたよ。ただ彼女は才能はあるので、コレからも活躍して欲しいですね。もしコイツは才能あるから生かしたけど、アイツは才能ないから殺したみたいな基準だったら嫌ですけどね!

 

(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 

 

最後に…

他にも「CGアニメで描いた家のテレビに手描きアニメが映ってて面白かった」とか「子供2人はワープ女を倒した後に「ゴーグル取ってやれよ!」と思った」とか色々感じた事はありましたが今回は割愛してます。ディズニーやピクサーのロゴ、エンドクレジットまでビシッと赤で決まったビジュアルとそれを彩る音楽は心底カッコ良かったです。オススメです!