何故『海賊とよばれた男』の製作費は10億円以上かかったのか?それは大量のVFXが理由だ!

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映画の製作費を知って「え!?この製作費で作ったの!?」と驚くケースと「え!?こんなに製作費かかってるの!?」と驚くケースの2つがある。2018年9月28日(金)に「金曜ロードSHOW!」で地上波初放送される『海賊とよばれた男』は後者のケースだ。

 

百田尚樹が漏らした製作費

『海賊とよばれた男』は出光興産創業者の出光佐三氏をモデルにしたといわれる主人公・国岡鐵造の物語だが、原作者百田尚樹によると本作の製作費は10億円以上かかっているという。同じく百田尚樹原作で岡田准一が主演を務め山崎貴監督がメガホンを取った『永遠の0』の製作費も約10億円だが、ゼロ戦や真珠湾攻撃など迫力のVFXが見所の戦争映画『永遠の0』に対して本作は人間ドラマの要素が強い作品の為同じレベルの製作費がかかっていたのに少し驚いた。

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「何故『海賊とよばれた男』は製作費がかかるのか?」という本題の前に百田尚樹のツイートの中の「百田尚樹の名前を極力出さない」という宣伝方法について一応解説しておくと、本作の予告編などでは「主演:岡田准一×監督:山崎貴『永遠の0』感動、再びー」というキャッチコピーが使われ、『永遠の0』と『海賊とよばれた男』のもう1つの共通項である原作者:百田尚樹の名前が無かった。

ただ本作の公開日は2016年12月10日(土)だったが、公開の2日後のツイートがこの有様だったので広報担当が百田尚樹という名前を極力出したく無かったという気持ちは理解出来るし、このツイートに関しても「勘弁してくれよ…」というのが正直な気持ちだっただろう。

 

※近年の製作費10億円クラスの実写邦画は『永遠の0』の他に『シン・ゴジラ』や『進撃の巨人』『鋼の錬金術師』などアクションをウリにした映画が挙げられる。

 

製作費が高い理由はVFX

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本作の製作費が日本映画の中でもトップクラスの予算が投じられているのはやはり山崎貴監督の十八番である大量のVFX作業によるものだろう。

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まず冒頭では良くも悪くも「多分この映画の中でこのシーンに一番力入れたんだろうな…」と感じさせる大迫力の東京大空襲が描かれる。ただやはり『永遠の0』と比べれば本作はこの手のお金のかかりそうな派手なシーンは少ない。ただ本作は多くの観客がCGだとは思わないような地味なシーンにも大量のVFXが使われている。

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例えば一見本物の満鉄の機関車に見える車両や物語の終盤に登場する日承丸なども全てVFXで製作した映像。

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他にも戦争から帰ってきたばかりの兵士達が見つめる荒廃した銀座の様子や背景のように自然に映り込む満州鉄道の本社の建物なども全てVFXで再現。

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またガソリンスタンドのシーンなど、一瞬しか画面に映らないシーンでも当時の資料などを集めて再現していくため莫大な予算がかかってしまったようだ。

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さらに本作はセットやミニチュア、CGなどを合成して描かれた映像も多く確認出来る。仮に人間ドラマがメインだとしても、過去の時代を描くには当時の様子を再現するためにVFX技術の他にも服装など様々な美術も必要な為、そういう面でも予算がかさんでしまうのだろう。

 

(C) 2016「海賊とよばれた男」製作委員会 (C) 百田尚樹/講談社

 

山崎貴監督がVFXで本当に描きたいモノ

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『海賊とよばれた男』のVFXは日本映画の中ではトップクラスのクオリティを誇っている。また『ALWAYS 三丁目の夕日』と比較して本作のVFXは3倍以上のカット数にも及ぶにも関わらず、製作費は横ばいなど日本のVFX技術の進歩を感じさせる。ただし山崎貴監督が本当にVFXで描きたいのは人間ドラマの脇役でしかない昔の日本を再現するVFXではなく、幼少期に憧れ特撮の世界に入るキッカケとなった『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』みたいなVFXが主役のSF映画なのだ。

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ただデビュー作とデビュー2作目で手掛けたSF映画『ジュブナイル』と『リターナー』が興行的にイマイチで監督生命が絶たれるくらいならと人間ドラマの『ALWAYS 三丁目の夕日』のオファーを受けた。

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ALWAYS 三丁目の夕日

その時山崎貴監督は「この作品こそがタイムマシーンで観客を昭和の時代にタイムスリップさせるんだ!」と強引に作品からSF要素を見つけ出し、乗り気ではないスタッフ達のモチベーションを上げたというエピソードがある。多分その発想は監督自身も言い聞かせないとやってられなかったのだろう。

そして多くの人が知るように『ALWAYS 三丁目の夕日』は興行収入32.3億円の大ヒットを記録して、「第29回日本アカデミー賞」の最優秀作品賞を始め14冠を達成した。こうして山崎貴監督は皮肉にも苦肉の策でオファーを受けた作品で日本映画のヒットメーカーの仲間入りを果たした。

ALWAYS 三丁目の夕日

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山崎貴監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』がヒットした以降もオリジナルのSF映画は未だ手掛けていない。ただまだその夢は捨てきれていないようだ。しかしオリジナルのSF映画は『海賊とよばれた男』以上に製作費がかかり、目標となる興行収入も多くなる。

『海賊とよばれた男』は製作費10億円に対して興行収入は23.7億円と2016年度実写邦画で第4位の成績だったが、東宝が目標とした興行収入50億円の半分の興行に終わり『永遠の0』の1/4の結果だった。

 

※『ALWAYS 三丁目の夕日』以降に『宇宙戦艦ヤマト』の実写映画版『SPACE BATTLESHIPヤマト』でSF映画を監督しているがオリジナルではない。

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(C)『日本のVFXを変えた男 ヒットメーカー 山崎貴の挑戦』/ NHK-BSプレミアム

 

最後に…

ネットでは山崎貴監督に対して「この人の映画は『ここ感動するところですよー!』みたいな演出がウザい」みたいなコメントをよく見ますし、その気持ちも分からなくはないんですけど個人的には日本映画トップクラスのVFX監督としてこれから先も日本映画の可能性の扉を開いていって欲しいですね。

※『海賊とよばれた男』の製作裏話は下リンクにまとまっています!興味のある人は是非!

www.junk-weed.site

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