豪華なCGの幻覚に酔いしれる化け猫映画『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』の感想

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今回は『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』の感想です。

 

観る前の期待度

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「偏見を持つ人間は最低だ」というスタンスを取りながら、内心では偏見に満ち溢れている最低な人間が自分だ。製作発表の段階でスキンヘッドで坊さんの格好をしている染谷将太のビジュアルを見て半笑いになり、莫大な製作費をかけた日中合作映画と聞けば「地雷臭しかしない」と決めつけてかかった。

また本作の情報が解禁される度に「日中オールキャストっていっても殆どのメンツ知らない人だな…」とか「主題歌が『君の名は。』を歴史的ヒットに導いたRADWIMPSって宣伝するの何だかな…」「阿部寛イズム全開で同じ名字の阿倍仲麻呂演じる阿部寛」「東京ドーム8個分の長安のセットを6年間かけて作った」「東洋の『ダ・ヴィンチ・コード』という自ら作品の品を下げる宣伝コピー」「製作費150億円なのに中国での興行は90億円くらい」などネガティヴに捉えてしまう情報が連発。ただ逆に「アレ、ここまで来ると逆にちょっと観てみたい」と思えて来るのから人間は不思議だ。

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一度そういう気持ちになるとRADWIMPSの主題歌『Mountain Top』の本編映像を使ったMVもとても豪華で興奮させられる映像だなと思え、「折角、日本と中国が力を合わせて超大作を使ってれたのだから映画を楽しまなきゃ損・損・Song!」とベッキーっ張りにテンションをあげて望もうと思いました。

  

観た後のネタバレ感想

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(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film

評価:★★(5段階)

CGで再現された長安の映像や幻覚のシーンは宴の席にいるのような豪華さで気分を酔わせる。また「人物の周りを回る」「ズームインとズームアップ繰り返す」「猫の視点から描く」など独特なカメラワークが続き面白い部分は多いモノの全体的にはイマイチな作品。というよりかなり退屈だった… ただ作品が持つ奇妙な雰囲気は嫌いではない。

 

  • 予告編のイメージとは異なる物語

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<出典:妖貓傳 (空海 KU KAI)妖貓現世预告片 LEGEND OF THE DEMON CAT: 黄轩 染谷将太 张雨绮 秦昊 阿部宽 - YouTube>

日本の予告編を観ると空海が楊貴妃の死の真相に迫る本格歴史ミステリーのように錯覚させられるが、中国でのタイトルは『妖猫伝 Legend of the Demon Cat』と本作が本当は化け猫を題材にしたファンタジー歴史ミステリーだという事を隠していない。恐らく日本の広報担当が「本格歴史モノで押しましょう!」と会議で決まったのだろう。その為中国の予告編では大々的に押されている化け猫の姿が、日本版では殆ど感じる事が出来ない。

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<出典:妖貓傳 (空海 KU KAI)妖貓現世预告片 LEGEND OF THE DEMON CAT: 黄轩 染谷将太 张雨绮 秦昊 阿部宽 - YouTube>

この日本の予告編を観て本格歴史ミステリーだと勘違いして鑑賞した人は冒頭で喋る化け猫が「庭の夾竹桃の根元に銭が埋まっている」と女に言うシーンを観て「アレ?思ってたのと違う…」とガッカリするのはムリないだろう。

その後も本作はフィクションラインが低いファンタジーシーンが連続し、目しか食べない化け猫の怒涛の殺戮シーンなどが展開される。ファンタジーだと割り切れば愉快なシーンだが、多くの日本人が求めていた映画ではなかったようだ。

 

  • 真相の解明は回想で…

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(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film

ただファンタジー映画だと割り切れば楽しめるのかと問われるとそういう訳でも無かったりするのが本作の一番の残念な所だ。本作の本筋は空海と白楽天が協力して楊貴妃の死の真相を追求するという物語だ。ただこの真相は彼らの推理で展開していくのではなく、安倍仲麻呂の日記の回想シーンで解き明かされる。その為彼ら2人の現在パートの面白みはそこまでない。

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(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film

さらに安倍仲麻呂の回想シーンも豪華なCGで彩られ画的な楽しさこそあれど、「阿部寛が『テルマエ・ロマエ』で日本の温泉に感動するのと同じノリで楊貴妃を愛するシーン」が展開される阿部ちゃんネタ以上の面白みはない。「新参者」で石原さとみのバレリーナに魅了される時もこの演技だったな…

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(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film

ただ一応楊貴妃の死の真相自体は悲劇として面白く、彼女が生き埋めにされ棺桶の中でもがいた後は結構ギョッとさせられたりもした。ただ余り楊貴妃が絶世の美女って感じがしないんだよな… まぁ、「モナ・リザ」が美人というのもピンと来てないので自分サイドの問題だろう。石原さとみは美人だって分かるけど。

 

  • 日本人が作った豪華なCG

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(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film

本作のCGは主に「オムニバス・ジャパン」という日本のCGスタジオで制作された。このスタジオは過去に『亜人』や『BRAVE HEATS 海猿』などの日本映画の中では比較的大作のVFXを担当した経験があるが、日本映画は大作でも製作費10億円前後。それに引き返え本作は製作費150億円の大作で、そのCGを仕上げるのは初めて経験だろうから中々苦労したのではないかと勝手に推測している。

ただ幻覚のシーンはCGっぽさが逆にこの世のモノとは思えない夢を見てるようなフワフワした気持ちにさせられ味を出していたが、もっとナチュラルに表現して欲しいシーンもCGっぽさ全開で少し冷めるシーンがあった。頑張ってはいたと思うが、やはりハリウッド大作と比べるとまだまだ分が悪いと再認識させられた。

 

  • 日本語吹替版で公開!!

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本作は日中合作映画だから日本語と中国語と両方が楽しめそうな字幕版に需要がありそうだと思ったが、何故か公開当初は日本語吹替版のみでの公開で後から「インターナショナル版」として字幕版が公開された。同時公開じゃダメだったの?ただ折角なので吹替版で見たが、クオリティーは中々だった。

 

  • 唐のオープンセットは観光地に…

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本作は前述した通り製作費150億円に対して中国での興行収入は約90億円とイマイチな結果だ。また日本国内では16億円程度と目標だった30億円の半分程度の興行に終わった。

www.dailyshincho.jp

ただ本作で作った唐のオープンセットは今後恒常的な撮影拠点とし、テーマパーク的な営業も開始するという。中国ではデカいセットを作ったら観光地にするイメージがあったが本作でもソレは適応されているようだ。

  

最後に…

全体的に退屈なシーンも多かったですが、お祭り気分に酔いしたれる作品という意味ではオススメです!