「レディ・バード」は母と娘の物語… 現実と憧れのギャップは自身を苦しめる…

f:id:junk-weed:20180606104840j:image

今回は「レディ・バード」の感想を語ります。

 

観る前の期待度

f:id:junk-weed:20180606114041j:image

「ロッテントマト」で批評家支持率100%を記録!

これが本作のウリになっているが、196人目の批評家は本作を腐ってると判断したため現段階で批評家支持率99%となってしまっている本作。ただ195人目までは批評家全員が本作を肯定しているという圧倒的な評価は変わらない。少なくとも100人目のレビューの時は「100人中100人が評価する映画」だったというわけだ。これは素直に凄い!まぁ、観客支持率は79%で超高評価とまではいかないけど十分な高評価を記録しているし、映画評論家の町山智浩さんがラジオで紹介してたのを聞いた時も面白そうだったのでボチボチ期待してた作品です。ただ本作の製作費は約10億円なんだけど、これは日本の超大作映画実写版「鋼の錬金術師」の製作費9億円を僅かだが上回っている… アメリカの低予算映画が日本のVFX超大作と同レベルの製作費とは… これが日本とアメリカの差か… 辛いな…

  

観た後のネタバレ感想

評価:★★★(5段階評価)

f:id:junk-weed:20180606172449j:image

この手のタイプの作品はよく日本テレビの深夜に放送している「映画天国」でよく観た覚えがある。主人公は17歳の高校3年生で髪は赤髪で、腕にはピンク色の包帯を巻き付けている。また彼女は自らの名前を「レディ・バード」と名乗り、その名で自身を呼ぶように強要させている。さらに彼女は勉強は出来ないし嫌いだしやる気もないけどニューヨーク(都心)の大学に進学を希望したり、処女を早く捨てたがったりスクールカースト上位の存在と交尾みたがったりと今の自分を否定し、ここではない何処かに幻想を抱きそこへ行きたいと願っている。そしてそこにさえ行けば何かが変わると信じて疑わない普通の女子高校生なのだ。ただ彼女はその欲求に対するコンプレックスが周りより少し強いだけなのだ。

f:id:junk-weed:20180606174343j:image

その為彼女はそのコンプレックスを解消する為に暴走する。しかし自分より少し背伸びして無理をしたところで、そのコンプレックスは増す一方だった。さらに様々な事を経験して行く事で色々な事実に触れてゆく。初めての彼氏がゲイだったり、童貞だと信じきっていた処女を捧げた彼氏はヤリチンだったり… さらに父親が鬱病という事も発覚して彼女の気持ちは整理が付かなくなる。理想と現実のギャップに苦しむのだ。その苦しみを和らいでくれたのは自身の暴走のせいで疎遠になりつつあった親友だった。自身を気取らず自然体で笑いあえる親友と過ごす事で彼女は人生において本当に大切なモノを知る事ができた。

f:id:junk-weed:20180606175617j:image

彼女はニューヨークの大学への進学を決める。しかしこれは地元の大学に進学して欲しかった母親には極秘で進めていた進路だった。その為母親は娘と口を利かなくなる。彼女は己を恥じ謝罪するが、母親は聞く耳を持ってくれない。そのまま彼女は母親からの見送らなくニューヨークに旅立ってしまう。しかし母親もまたそれを公開していた。ここの母親が車の中で感情を剥き出すシーンは凄く良い。ニューヨークで彼女は母親からの手紙を読む。これは鬱だった父親がゴミ箱から拾い娘の鞄の中に忍ばせたモノだ。ここで父親が娘と母親の絆を繋ぎ止める演出も見事。この手紙を読み彼女はニューヨークで出会った男に自らの本名と出身地を偽る事なく名乗る。彼女を縛り付けていたコンプレックスが解消された瞬間だ。

f:id:junk-weed:20180606181756j:image

彼女はその席で酔い潰れ病院で目を覚ます。(初めは男に飲まされて犯されたのかと勘違いしてかなりビビった…)彼女は地元の景色を思い出し、自身の母親もまたあの地で育ち同じ景色を見て育った事に気付き母親に感謝の留守番電話を入れる。ここで物語の幕は閉じる。彼女は地元を離れ、親元を離れる事で始めて自身の生まれ育った街や家族を愛せるようになった。これは彼女が大人の一歩を踏み出すまでの物語。オススメです。

 

おまけ1

本作の監督であるグレタ・ガーウィグさんは、本作の主人公と同じくサクラメント出身でニューヨークの大学に進学している。彼女のインタビューを読むと本作は自身の体験に基づいた故郷へのラブレターと語っている。しかしデビュー作品で興行的・批評的に成功を収めるのはやっぱり凄いな…

www.moviecollection.jp

 

おまけ2

f:id:junk-weed:20180606184727p:image

本作の主人公は自身に自ら「レディ・バード」という名前を付けるが、これは「スターウォーズ」のカイロ・レンと同じで自分は特別な存在だと信じたい現れ。

f:id:junk-weed:20180606184432p:image

ちなみにカイロ・レンはマスクを殴り壊す事でダースベイダーの影を追うのではなく自身の道を自ら進む意思表示をした。

 

おまけ3

f:id:junk-weed:20180606184632j:image

※画像は「斉木楠雄のΨ難」/ 集英社

「レディ・バード」や「カイロ・レン」みたいな人のことを最近は一括りに中二病と言われたりする。ただ中二病の考案者である伊集院光は「(日本の教育制度における)中学2年生頃の思春期に見られる、背伸びしがちな言動」を自虐する語としての本来の意味と違う使われ方に複雑な思いを抱いていると告白している。確かに自分が作った言葉が誤用されて広まったら気持ち良くないだろうし、自分の番組にゲストで呼んだ文化人が誤用していたら指摘し難いだろうし… 難しい…