スポンサーリンク

漫画賞総ナメで話題沸騰中の「BEASTARS」は「ズートピア」の世界に奥行きを与えた作品だ!

スポンサーリンク

BEASTARS 1 (少年チャンピオン・コミックス)

今回は数々の漫画賞を総ナメにした事で話題沸騰中の「BEASTARS(ビースターズ)」の魅力を紹介します。

板垣巴留

秋田書店「週刊少年チャンピオン」

 

本作の世界観

f:id:junk-weed:20180516002115j:image

本作の舞台は動物を擬人化した世界で草食動物は肉食動物に怯える一方、その野蛮性を見下しいている風潮もある。これはディズニー映画「ズートピア」の世界観と酷似しているが、原作者のインタビューを読むとディズニー映画が好きだと語っている。その為動物が服を着て二足歩行する世界を描くことに抵抗はなかったという。ただこの動物を擬人化した世界は子供の頃から考えていたというが、ディズニー映画好きで尚且つこのマンガの連載を構想していたなら「ズートピア 」を観ていないはずはなく無意識にせよ影響は受けていると考えられる。

f:id:junk-weed:20180516012753j:image

時系列的には「ズートピア」の後出しになってしまったが、本作は確実に「ズートピア 」より優れていると感じた描写があった。それは動物たちの食べ物事情だ。「ズートピア 」では物語上で食べ物の話に触れていない(一応設定では虫を食べているらしいが…)が、動物を擬人化し肉食動物と草食動物の差を描く以上そこを避けて描くことは逃げと捉えらわず得ない。しかし本作では「肉を食べることは重罪」と法の下で規制されていることをしっかりと描き社会が成り立っていることを示している。

f:id:junk-weed:20180516012631j:image

また肉食用と草食用にメニューが分かれており、肉食用には豆バーグのような肉を感じさせるメニューを出すなどしっかりとディテールまで描き込み解説してくれるのも嬉しい。架空の世界を描く以上こういう細かいところまで設定を煮詰めているのは好印象だ。映画だと尺の問題でどうしてもテーマを描くことを優先してしまう為こういう描写は難しい。

f:id:junk-weed:20180516013653j:image

社会システムの描きといえば本作のタイトルにもなっている「ビースター」という地位の設定も興味深い。

f:id:junk-weed:20180516013741j:image

こういう社会設定など細かく描かれれば描かれる程、この世界の実在感は上がっていき物語にのめり込みやすくなる。

f:id:junk-weed:20180516013357j:image

また単純な肉食vs草食の構図だけに落とし込むだけでなく、草食動物内にもカーストが存在していることを描くの良い。さらにディズニー映画では描かれない暴力描写なども描かれる為「ズートピア」とは差別化が図られている。

ズートピア (吹替版)

ズートピア (吹替版)

 

 

本作の主人公

f:id:junk-weed:20180516013954j:image

本作の主人公はハイロオオカミのレゴシで、名前の由来はエド・ウッド作品によくゾンビ役で登場したベラ・ルゴシからきている。チェリートン学園の高等部2年生で演劇部という設定で、肉食動物の中でもトップレベルで恐れられるオオカミという種類ながら優しい心の持ち主だが、その見た目や種故に草食動物からはネガティブなイメージを持たれている。

f:id:junk-weed:20180516014357j:image

そんな主人公だが、彼もやはりオオカミの子。草食動物の中でも特に弱々しいウサギ相手に恋をするが、彼は愛故に彼女と1つになりたいのではなく遺伝子レベルで逃れられないオオカミの本能から彼女を食べることで1つになりたいだけなのではと思い悩む。本作はそんなジレンマに板挟みにされるラブストーリーなのだ。

f:id:junk-weed:20180516014740j:image

また彼女を傷つけてしまったことを悩み食欲が無い時も、しっかりと豆バーグだけは食べているプレートを見せるなど読者側にエクスキューズを投げかける描写も実に上手い。

 

物語の推進力

f:id:junk-weed:20180516015238j:image

さらにこの物語に確かな推進力をもたらすのは第1話の冒頭で描かれた肉食動物による草食動物の殺害事件の謎だ。この犯人は明らかにならず物語は進行していく。この謎のおかげで本作は1人の肉食動物の恋物語という個人の問題だけではなく、この世界全体の問題に触れることができ世界観に奥行きをもたらすことに成功している。さらに主人公がこの事件の容疑をかけられることで世界の問題と個人の問題両方に絡めることができ、また両方に同じだけの問題価値を与えることができている。

 

数々の漫画賞を総ナメにしたことも納得のクオリティだが、原作者は美大で映画を専攻していたという。ならば「本作の実写映画化もあり得るのか?」と思ったが原作者はそれは難しいと考えているようだ。確かに動物が二足歩行で歩く世界観を実写で表現するのは日本映画では難しそうだし、今まで人間が1人も出ない実写映画があったのかと問われれば例を出すことが出来ない。つまり本作は正に映像化不可能なマンガだということになる。実写映画では味わえないマンガだからこその醍醐味を味わいたい人や「ズートピア」が好きな人には特にオススメです!

BEASTARS 1 (少年チャンピオン・コミックス)

BEASTARS 1 (少年チャンピオン・コミックス)